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加給年金と振替加算|夫婦の年齢差で変わる年金額

加給年金と振替加算|夫婦の年齢差で変わる年金額

「夫の年金が始まったら、しばらく多めに振り込まれていたのに、私が65歳になったら減りました」——ご相談のなかで、こうしたお話をうかがうことがあります。これは手違いではなく、加給年金という上乗せが終わったためです。そして、以前はその代わりに付いていた振替加算が、いまの50代の方には付きません。夫婦の年齢差によって受け取れる総額が変わる部分を、この記事で整理します。

石田健雄 FP事務所FPis代表

執筆:石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表

CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。東京都渋谷区。

CFP1級FP技能士独立系FP渋谷

📌 この記事の要点

  1. 加給年金は、厚生年金の加入期間が20年以上ある方に65歳未満の配偶者がいる場合に付く上乗せで、年額40万円ほど(年度ごとに改定)になります。
  2. 加給年金は配偶者が65歳になった月で終わります。夫婦の年齢差が大きいほど受け取れる期間が長くなります。
  3. 以前は加給年金が終わると配偶者側に振替加算が付いていましたが、昭和41年4月2日以後に生まれた方には付きません。いまの50代の多くがこちらに該当します。
  4. 老齢厚生年金を繰り下げると、待っている期間は加給年金も支給されず、加給年金自体は増額の対象になりません。対象の配偶者がいる場合は確認が要ります。
  5. 配偶者ご自身に厚生年金20年以上の老齢厚生年金がある場合など、加給年金が支給停止になるケースもあります。
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加給年金とは|年金についた家族手当のような上乗せ

加給年金は、厚生年金の加入期間が20年以上ある方が65歳になったときに、65歳未満の配偶者や高校卒業前の子がいる場合に加算される上乗せです。生計を維持していることが前提になります。

加給年金は、会社員として長く働いた方の年金に付く家族手当のような上乗せです。ご自身の年金額が増えるというより、扶養しているご家族がいる期間だけ加算される仕組みです。

対象になるご家族

対象 条件 いつまで
配偶者 65歳未満で、生計を維持されている 配偶者が65歳になる月まで
子 18歳到達年度の末日まで(障害等級1級・2級の場合は20歳未満) その年度末まで

金額の目安

配偶者に対する加給年金は、基本の加算額に受給権者の生年月日に応じた特別加算が上乗せされます。昭和18年4月2日以後に生まれた方の場合、合計で年額40万円ほどになります。

📌 月あたり3万円台の上乗せです
年額40万円は、月に換算すると3万3千円ほどです。夫婦の年齢差が5歳あれば5年間、10歳あれば10年間。5歳差なら合計200万円前後、10歳差なら400万円前後の差になります。
※金額は年度ごとに改定されます。最新の額は日本年金機構の案内でご確認ください。

加給年金がつく条件|厚生年金20年と配偶者の年齢

加給年金を受けるには、受給権者の厚生年金の加入期間が原則20年以上あること、配偶者が65歳未満であること、配偶者の年収が850万円未満であることなどの条件を満たす必要があります。

受給権者側の条件

  • 厚生年金の加入期間が原則20年以上(生年月日により15年以上などの短縮措置がある場合があります)
  • 老齢厚生年金を受け取り始めていること

配偶者側の条件

  • 65歳未満であること
  • 生計を維持されていること(年収の目安は850万円未満)
  • 配偶者ご自身が、厚生年金20年以上の老齢厚生年金や障害年金を受けられる状態でないこと

⚠️ ここは見落とされやすい点です。配偶者ご自身も長く会社員として働き、厚生年金の加入期間が20年以上あって老齢厚生年金を受け取れる場合、加給年金は支給停止になります。共働きのご夫婦では、「付くと思っていたのに付かなかった」ということが起こりえます。

手続きが要る場合があります

加給年金は、年金の請求書に配偶者の情報を記載することで加算されます。届出が漏れていると加算されないため、年金の請求時に配偶者の欄を埋めているかの確認が要ります。すでに受け取り始めていて加算が漏れている場合は、年金事務所にご相談ください。

加給年金が止まるとき|配偶者が65歳になる日

加給年金は配偶者が65歳になる月をもって終わります。夫婦の年齢差がそのまま受け取れる期間になり、差が小さいご夫婦では期間がごく短くなります。

加給年金は、期限つきの上乗せです。配偶者が65歳になった月で終わります。配偶者ご自身の老齢基礎年金が始まるためです。

夫婦の年齢差 加給年金を受け取れる期間 合計の目安(年40万円として)
1歳差 約1年 約40万円
3歳差 約3年 約120万円
5歳差 約5年 約200万円
10歳差 約10年 約400万円

※夫が65歳で年金を受け取り始める場合の目安です。

家計の変化として見ると

加給年金が終わる月、世帯の年金収入は月3万円台下がります。同じ月に配偶者の老齢基礎年金が始まるため、差し引きでは増えることが多いのですが、その差は大きくありません。

📌 配偶者が65歳になる月に起きること
①加給年金が終わる(世帯で月3万円台のマイナス)
②配偶者の老齢基礎年金が始まる(40年納付なら月6万8千円ほど)
③配偶者が厚生年金の加入期間を持つ場合、老齢厚生年金も始まる
差し引きでは増えることが多いものの、①だけを見て「減った」と感じられる方が少なくありません。

振替加算とは|昭和41年4月2日以後生まれには付きません

振替加算は加給年金が終わったあとに配偶者の老齢基礎年金に加算される仕組みですが、大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた方が対象です。それ以後に生まれた方には付きません。

加給年金が終わったあと、以前は振替加算という上乗せが配偶者側に付いていました。加給年金が消えるぶんを、配偶者の老齢基礎年金で一部補う仕組みです。

対象となる生年月日

⚠️ 振替加算の対象は、大正15年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた方です。昭和41年(1966年)4月2日以後に生まれた方には、振替加算は付きません。

2026年の時点で、昭和41年4月2日以後に生まれた方は60歳未満です。つまり、いま50代の方の多くが振替加算の対象外です。

なぜ付かないのか

振替加算は、国民年金が任意加入だった時代に専業主婦として過ごした期間があり、その分だけ老齢基礎年金が少なくなる方を補うために設けられた仕組みです。昭和61年4月から、会社員の配偶者は第3号被保険者として国民年金に加入する扱いになりました。その後に20歳を迎えた世代は、専業主婦であっても加入期間が積み上がるため、補う必要がなくなったという整理です。

50代の方にとっての意味

振替加算がないということは、加給年金が終わった月のマイナスを補う上乗せがないということです。世帯の年金収入は、配偶者の老齢基礎年金と老齢厚生年金だけで組み直すことになります。

ご自身が第3号被保険者だった期間が長い方の場合、老齢基礎年金は満額に近くなりますが、老齢厚生年金は加入していた期間の分だけになります。ここが思っていたより少ないというお声を、実務のなかでたびたびうかがいます。

夫婦の年齢差で受け取れる総額はどう変わるか

加給年金の期間は夫婦の年齢差で決まるため、同じ収入でも世帯で受け取る総額に差が出ます。年齢差が大きいご夫婦では、その分を別の準備で置き換える必要が小さくなります。

条件をそろえて並べると、年齢差の影響が見えます。夫が65歳から老齢厚生年金を受け取り、厚生年金の加入期間が20年以上ある場合とします。

妻が3歳年下 妻が8歳年下
加給年金の期間 約3年 約8年
加給年金の合計(年40万円として) 約120万円 約320万円
妻の年金が始まるまでの期間 夫の受給開始から3年 夫の受給開始から8年
その期間の世帯収入 夫の年金+加給年金 夫の年金+加給年金

年齢差が大きいほど、つなぎの期間が長くなります

加給年金が長く受け取れる一方で、配偶者ご自身の年金が始まるまでの期間も長くなります。世帯の年金収入が2人分そろうまでの年数が長いということです。

妻が8歳年下の場合、夫が65歳から73歳までの8年間は、世帯の年金収入が夫の分+加給年金のみです。月3万円台の加給年金では、妻の年金が始まったあととの差は埋まりません。

📌 年齢差が大きいご夫婦で確認したいこと
配偶者の年金が始まるまでの期間、世帯の支出を年金でどこまでまかなえるか。不足する分は、働くか、資産から取り崩すかのどちらかになります。年齢差が5歳を超える場合、この期間の設計が家計に効いてきます。

繰り下げを検討するときに気をつけること

老齢厚生年金を繰り下げている期間は加給年金も支給されず、加給年金の額は増額の対象になりません。対象の配偶者がいる場合、基礎年金だけを繰り下げるという選択肢もあります。

年金の受け取りを遅らせると1か月あたり0.7%増える仕組みがあります。ただし、加給年金の対象となる配偶者がいる場合、注意したい点があります。

⚠️ 老齢厚生年金を繰り下げているあいだ、加給年金は支給されません。そして加給年金の額そのものは、繰り下げによる増額の対象になりません。待っているあいだに配偶者が65歳になってしまうと、加給年金を受け取れる期間が短くなる、あるいはまったく受け取れないことになります。

3つの選び方を並べると

選び方 加給年金 増額
厚生年金・基礎年金の両方を65歳から受け取る 配偶者が65歳になるまで受け取れます 増額はありません
両方を繰り下げる 繰り下げ期間は受け取れません 両方が増額されます
基礎年金だけを繰り下げ、厚生年金は65歳から 配偶者が65歳になるまで受け取れます 基礎年金が増額されます

3つ目の形は、加給年金を確保しながら増額も取りにいく組み合わせです。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げを選べます。

比べる数字

比較はシンプルにできます。

  • 繰り下げで受け取らずに済ませる加給年金の合計(年40万円×待つ年数)
  • 繰り下げによる増額の合計(老齢厚生年金の額×0.7%×繰り下げ月数×受け取る年数)

老齢厚生年金が年120万円の方が3年繰り下げると、増額は25.2%で年約30万円です。一方、その3年で受け取らずに済ませる加給年金は約120万円です。増額分で120万円を取り戻すには4年かかります。繰り下げが有利になるまでの年数が、加給年金の分だけ後ろにずれるという見方ができます。

⚠️ 上の数字は考え方を示すための概算です。実際の年金額、加給年金の額、税と社会保険料の影響はお一人ずつ異なります。ご自身の金額での確認は、年金事務所またはねんきんネットをご利用ください。

50代のうちに確認する4つのこと

ねんきん定期便の加入期間、配偶者の生年月日、ご自身の厚生年金の加入期間、繰り下げの予定という4つを確認すれば、加給年金と振替加算の扱いがはっきりします。

  1. ご自身と配偶者の厚生年金の加入期間
    20年以上あるかどうかが分かれ目です。ねんきん定期便の「厚生年金保険」の月数で確認できます。ご夫婦それぞれの期間を並べてみてください。
  2. 配偶者の生年月日
    昭和41年4月2日以後なら、振替加算は付きません。加給年金が終わる月がいつになるかも、ここから計算できます。
  3. 加給年金が終わる月
    配偶者が65歳になる月です。その月に世帯の年金収入がどう変わるかを、前後で書き出しておきます。
  4. 繰り下げを考えているか
    加給年金の対象となる配偶者がいる場合、老齢厚生年金の繰り下げは慎重に比べる価値があります。基礎年金だけを繰り下げる形も選べます。

35年の実務のなかで感じているのは、加給年金と振替加算は制度を知っていた方だけが取りにいけている部分だということです。ご自身から請求しなければ加算されない場面もあります。

ねんきん定期便には、加給年金の額は書かれていません。ご夫婦2人分の定期便を並べて、生年月日と加入期間を確認する。50代のうちにこれをしておくだけで、受け取り方の選択肢が見えてきます。

加給年金と振替加算についてよくあるご質問

加給年金と振替加算について、50代のご夫婦からいただくご質問をまとめました。条件、手続き、繰り下げとの関係、共働きの場合の扱いを扱っています。

加給年金は自動で加算されますか。
年金の請求書に配偶者の情報を記載することで加算されます。届出が漏れていると加算されないことがありますので、すでに受け取り始めていて加算がない場合は年金事務所にご相談ください。
共働きでも加給年金は付きますか。
配偶者ご自身が厚生年金20年以上の老齢厚生年金を受けられる場合、加給年金は支給停止になります。配偶者の加入期間が20年未満であれば、他の条件を満たせば加算されます。
私は昭和42年生まれです。振替加算は付きますか。
振替加算の対象は昭和41年4月1日までに生まれた方です。昭和42年生まれの方には付きません。
加給年金は税金がかかりますか。
加給年金も老齢厚生年金の一部として扱われ、公的年金等の収入に含まれます。他の年金と合わせて公的年金等控除が適用されます。
夫が繰り下げると、加給年金はどうなりますか。
老齢厚生年金を繰り下げているあいだ、加給年金は支給されません。また加給年金の額は繰り下げによる増額の対象になりません。待っているあいだに配偶者が65歳になると、受け取れる期間が短くなります。
妻が年上の場合、加給年金は付きませんか。
加給年金は65歳未満の配偶者がいる場合の加算です。妻が年上で、夫が65歳になる時点で妻がすでに65歳を超えている場合、配偶者に対する加給年金は加算されません。ただし妻の側に厚生年金20年以上の加入期間があり、夫が65歳未満であれば、妻の年金に加給年金が付く場合があります。
配偶者が働いていると加給年金は止まりますか。
生計を維持されているかどうかが条件で、年収の目安は850万円未満です。この範囲内であれば、働いていても加算されます。
加給年金がなくなる月は、通知が来ますか。
年金額が変わるときには通知が送られます。ただし加給年金の終了と配偶者の年金開始が同じ時期に重なるため、変化がわかりにくいことがあります。事前に時期を把握しておくことをお勧めします。
基礎年金だけを繰り下げることはできますか。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げを選べます。加給年金の対象となる配偶者がいる場合、厚生年金は65歳から受け取り、基礎年金だけを繰り下げる形が選択肢になります。
加給年金の額は毎年変わりますか。
年度ごとに改定されます。最新の額は日本年金機構の案内でご確認ください。

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石田健雄 FP事務所FPis代表

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