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夫婦の年金はどちらを繰り下げる|受け取り順の考え方

夫婦の年金はどちらを繰り下げる|受け取り順の考え方

年金の繰り下げは、夫婦がそろって同じ判断をする必要はありません。老齢基礎年金と老齢厚生年金はそれぞれ別に繰り下げられますし、夫と妻でも別々に選べます。ところが、実際のご相談では「うちはどうしましょう」と世帯でひとつの答えを探そうとされることが多いのです。この記事では、夫婦のあいだで受け取る順番をどう考えるかを、長く受け取る側の視点から整理します。

石田健雄 FP事務所FPis代表

石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表/CFP・1級FP技能士

CFP1級FP技能士渋谷区独立系FP

📌 この記事の要点

  1. 繰り下げは夫婦それぞれ、基礎年金と厚生年金それぞれで別に選べる。世帯でひとつに決める必要はない
  2. 判断の軸は「どちらが長く受け取ることになりそうか」。統計上、妻のほうが長く受け取る期間は長くなりやすい
  3. 繰り下げているあいだの生活費を用意できるかどうかが、選べるかどうかを決める
  4. 加給年金は繰り下げても増えず、繰り下げ中は受け取れない。夫の厚生年金の繰り下げでは、ここが判断材料になる
  5. 遺族厚生年金は繰り下げによる増額が反映されない。夫の厚生年金を繰り下げるときに知っておきたい点
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年金の繰り下げは、夫婦で別々に選べる

老齢基礎年金と老齢厚生年金は、それぞれ別に繰り下げることができます。さらに夫と妻でも別々に判断できます。つまり世帯としては複数の組み合わせがあり、ひとつの正解を探すよりも、どの部分を遅らせるかを分けて考えるほうが決めやすくなります。

まず前提を整理します。繰り下げには、次の自由度があります

  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げられる。片方だけ遅らせることもできます
  • 夫と妻でも、別々に判断できる。同時に決める必要はありません
  • 66歳以降であれば、いつでも請求できる。あらかじめ「70歳まで」と申し出るのではなく、請求した時点で増額率が決まります

増額率は1か月あたり0.7%。75歳まで遅らせると84%の増額になり、この増額は生涯続きます。

受給開始 増額率 本来10万円の場合
66歳 8.4%増 約10万8,400円
70歳 42.0%増 約14万2,000円
75歳 84.0%増 約18万4,000円

💡 「世帯でひとつの答え」を探さない:夫の基礎・夫の厚生・妻の基礎・妻の厚生の4つを、それぞれ別に見ます。分けて見ると、遅らせやすい部分と、そうでない部分が見えてきます。

出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

判断の軸は「どちらが長く受け取ることになるか」

繰り下げによる増額は生涯続くため、長く受け取る側ほど効果が積み重なります。厚生労働省の簡易生命表では女性の平均寿命が男性より長く、夫婦の年齢差も加わることから、多くの世帯では妻が長く受け取る側になります。

繰り下げの効果は、受け取る期間の長さで決まります。増額率は同じでも、20年受け取る人と30年受け取る人では、積み重なる金額が違います。

長く受け取る側はどちらか

厚生労働省の簡易生命表では、女性の平均寿命は男性より長い状態が続いています。加えて、夫が年上の夫婦が多いという実態があります。この2つが重なると、妻のほうが年金を受け取る期間が長くなりやすいことになります。

💡 これは統計上の傾向であって、それぞれのご家庭に当てはまるとは限りません。ご健康の状態やご家系の傾向によって、判断は変わります。数字は出発点で、答えではありません。

ひとつの考え方:妻の分を厚くする

長く受け取る側の月額を上げておくと、後半の家計が安定しやすくなります。夫婦二人の期間は世帯としての収入で暮らせますが、ひとりになったあとは自分名義の年金が主な収入になるためです。

Jさん(59歳)は、ご主人が5歳年上でした。「二人のあいだは何とかなると思うんです。気になるのは、そのあと」。この感覚は、多くの方に共通します。

ただし、繰り下げには条件がある

妻の分を繰り下げるには、その間の生活費を別の収入でまかなえることが必要です。夫の年金を先に受け取る、働く収入がある、取り崩せる資産がある。いずれかが要ります。

出典:厚生労働省「簡易生命表」

加給年金があると、夫の厚生年金は繰り下げにくい

厚生年金の加入期間が20年以上ある方に、年下の配偶者がいる場合、加給年金が上乗せされることがあります。この加給年金は繰り下げても増額されず、繰り下げているあいだは受け取れません。夫の厚生年金を遅らせるかどうかの判断材料になります。

ここは見落とされやすいところです。

加給年金とは

厚生年金の加入期間が原則20年以上ある方が65歳になったとき、生計を同じくする65歳未満の配偶者がいると、老齢厚生年金に上乗せされる仕組みです。配偶者が65歳になるまで続きます。

繰り下げるとどうなるか

⚠️ 加給年金は、老齢厚生年金を繰り下げているあいだ受け取れません。しかも、繰り下げによる増額の対象にもなりません。つまり遅らせた期間の加給年金は、受け取らないまま過ぎていくことになります。

年の差がある夫婦では、加給年金が支給される期間が長くなります。その期間に厚生年金を繰り下げると、受け取らずに終わる金額が大きくなります

分けて考える

ここで効いてくるのが、基礎年金と厚生年金を別々に繰り下げられるという仕組みです。

組み合わせ 加給年金 向いている場合
厚生年金だけ65歳から受け取る 受け取れる 年下の配偶者がいて、加給年金の期間が長い
基礎年金だけ繰り下げる 影響なし 厚生年金と加給年金で当面の生活費をまかなえる
両方繰り下げる 繰り下げ中は受け取れない 加給年金の対象でない、または金額が小さい

Kさん夫妻は、夫が63歳、妻が55歳。加給年金の期間が10年に及ぶ見込みでした。試算したところ、夫は厚生年金を65歳から受け取り、基礎年金だけを繰り下げる形が家計に合っていました。

出典:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

遺族厚生年金には、繰り下げの増額が反映されない

夫が亡くなったあとに妻が受け取る遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分をもとに計算されます。繰り下げによる増額は反映されないため、夫の厚生年金を繰り下げても、遺族厚生年金の額は増えません。

これも、繰り下げを考えるときに知っておきたい点です。

遺族厚生年金の計算のもとになるもの

遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を基本として計算されます。ここでいう報酬比例部分は、繰り下げによる増額を加える前の金額です。

⚠️ 夫の厚生年金を繰り下げても、その増額分は遺族厚生年金には引き継がれません。繰り下げによる増額は、本人が受け取っているあいだだけのものです。

順番の考え方に効いてくる

この点を踏まえると、次のような整理ができます。

  • 夫の厚生年金を大きく繰り下げる効果は、夫が受け取る期間に限られる
  • 妻自身の年金を繰り下げた分は、妻が生きているあいだずっと続く
  • したがって、繰り下げの効果を長く残したいなら、妻自身の分を厚くするほうが働きやすい

妻の年金と遺族厚生年金の関係

妻が自分の老齢厚生年金を持っている場合、遺族厚生年金との調整があります。自分の老齢厚生年金を先に受け取り、遺族厚生年金のほうが多ければ差額が支給されるという仕組みです。

この調整があるため、自分名義の年金がどのくらいあるかによって、世帯としての手取りの姿が変わります。ねんきん定期便で、ご夫婦それぞれの見込額を確認しておくことをお勧めします。

出典:日本年金機構「遺族厚生年金」

繰り下げているあいだの生活費をどう用意するか

繰り下げは、受け取らない期間の生活費を別に用意できる方だけが選べます。働く収入、先に受け取るほうの年金、資産の取り崩しの3つが原資になります。この見通しが立たないうちは、繰り下げを前提にした計画を立てないほうが安全です。

繰り下げの増額率がどれだけ有利でも、その期間を暮らせなければ選べません

原資は3つ

原資 特徴 注意点
働く収入 資産を減らさずに済む 健康と勤め先の状況に左右される
先に受け取るほうの年金 確実に入る 夫婦のどちらかは受け取ることになる
資産の取り崩し 金額を調整しやすい 取り崩しすぎると、後半の余裕が減る

取り崩す額を先に計算する

たとえば妻の年金を70歳まで繰り下げる場合、65歳から70歳までの5年分の不足額を用意することになります。月10万円の年金を繰り下げるなら、5年で約600万円です。

この600万円を取り崩したうえで、増額後の年金で暮らしていけるかを見ます。繰り下げは、先に払って後で受け取る形と考えると分かりやすくなります。

💡 途中でやめられます。繰り下げは「70歳まで」と申し出る仕組みではなく、請求した時点までの増額率が適用されます。68歳で必要になれば、そこで請求できます。この柔軟さは、繰り上げにはないものです。

よくある3つの誤解

夫婦の年金については、繰り下げに関する誤解がいくつかあります。夫婦でそろえないといけない、繰り下げれば得になると決まっている、繰り下げると後から取り消せない。いずれも実際とは違います。

誤解1:夫婦でそろえないといけない

そろえる必要はありません。夫と妻、基礎年金と厚生年金、それぞれ別に判断できます。世帯として最も合う形は、たいてい組み合わせになります。

誤解2:繰り下げれば得になる

増額率は決まっていますが、受け取る期間が短ければ、総額では少なくなります。何歳まで受け取ると総額が並ぶかという分岐点はありますが、それが何歳になるかは事前には分かりません。

また、年金額が増えると税や社会保険料の負担も増えます。手取りベースで見ると、増額率の通りには増えません。

誤解3:一度決めたら変えられない

繰り下げは、請求した時点で増額率が決まります。途中で必要になれば、そこで請求できます。また、繰り下げを待っていた方が、65歳にさかのぼって受け取る選択(増額なしの一括受給)を選べる場合もあります。

💡 繰り上げとの違いはここです。繰り上げは請求すると取り消せません。繰り下げは、待っているあいだは選択の余地が残ります。戻せるかどうかで見ると、性質がまったく違う制度です。

決める前に確認する4つのこと

夫婦の年金の受け取り順を決める前に、それぞれの見込額、加給年金の有無、繰り下げ期間の生活費、そして健康の状態を確認します。この4つがそろうと、どの部分を遅らせるかの判断ができます。

確認する順番

  1. ねんきん定期便で、夫婦それぞれの見込額を確認する:基礎年金と厚生年金を分けて見ます
  2. 加給年金の対象かどうかを確認する:厚生年金の加入期間と、配偶者の年齢で決まります
  3. 繰り下げ期間の生活費の目処を立てる:働く収入、先に受け取る年金、取り崩す額を並べます
  4. 健康の状態と、ご家族の傾向を考える:数字だけでは決まらない部分です

💡 1と2は、年金事務所やねんきんネットで確認できます。ご夫婦そろって同じ日に確認すると、比べやすくなります。

「決めない」でよい部分もある

繰り下げは、65歳の時点ですべてを決める必要がありません。受け取らずに待っているあいだも、選択肢は残っています。「とりあえず受け取らずに1年様子を見る」という選び方もできます。

ご相談の場で行っていること

FPis(エフピス)では、ご夫婦それぞれの見込額と加給年金の有無を並べたうえで、繰り下げる場合と繰り下げない場合の家計の姿を、年ごとに書き出しています。制度の説明ではなく、ご自身の数字で見ていただくためです。

「どちらが得か」ではなく、「どの形なら続けられるか」を一緒に探すところからお手伝いします。

よくある質問

夫婦の年金の受け取り順について、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。繰り下げの自由度と、加給年金・遺族年金との関係に関するものが中心です。

繰り下げは夫婦でそろえる必要がありますか?
ありません。夫と妻それぞれ、また基礎年金と厚生年金それぞれで別に判断できます。
どちらを繰り下げるのがよいですか?
長く受け取ることになりそうな側の分を厚くする、という考え方があります。ただし加給年金の有無や生活費の見通しによって変わります。
繰り下げるとどのくらい増えますか?
1か月あたり0.7%の増額です。70歳まで遅らせると42%、75歳では84%の増額になり、生涯続きます。
加給年金は繰り下げても増えますか?
増えません。さらに、老齢厚生年金を繰り下げているあいだは加給年金も受け取れません。
夫の年金を繰り下げると、遺族厚生年金も増えますか?
増えません。遺族厚生年金は繰り下げによる増額を加える前の報酬比例部分をもとに計算されます。
繰り下げは途中でやめられますか?
やめられます。請求した時点までの増額率が適用されるため、必要になった時点で請求できます。
繰り下げているあいだの生活費はどうすればよいですか?
働く収入、先に受け取るほうの年金、資産の取り崩しの3つが原資になります。この見通しが立たないうちは無理をしないほうが安全です。
繰り下げると税や保険料も増えますか?
年金額が増えると、所得税・住民税や社会保険料の負担も増えます。手取りベースで確認してください。
繰り上げと繰り下げでは、性質が違うのですか?
違います。繰り上げは請求すると取り消せませんが、繰り下げは待っているあいだ選択の余地が残ります。
相談するとしたら、何を用意すればよいですか?
ご夫婦それぞれのねんきん定期便があれば十分です。見込額と加入期間から、加給年金の有無も確認できます。

東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由

FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系のFP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務したのち、2025年4月に独立しました。ご夫婦の年金については、それぞれの見込額を並べて、受け取り方の組み合わせを一緒に検討しています。

石田健雄 FP事務所FPis代表

石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表

CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。ライフプラン・保険・資産運用・相続のご相談に対応しています。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。

対応エリア:東京都渋谷区周辺・首都圏全域(オンライン可)

日経BP(日経ビジネス Human Capital)に取材掲載

「70歳まで働き続けたい。
だからこそ、今このタイミングで独立するべきだ」

石田は第一生命に35年間勤め、本社所属のFPとして多くのお客様に向き合ってきました。40代で個人向け営業の最前線に立った4年間は「会社人生で最も充実していた」と振り返るほど手応えのある日々でした。

とりわけ印象に残っているのが、ご家族への寄り添いサポートです。複雑な手続きを一緒に進めてさしあげると「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただきました。「お客様の役に立てる喜び」——その体験が石田の原点です。

2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。

📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)

FPisが提供できる5つの強み

  • 独立系のFP事務所:特定の金融機関に雇用されていないため、転勤で担当が変わることがありません
  • 報酬の出どころを開示:いただく報酬がどこから来ているかを「なぜ無料なのか」にすべて書いています
  • ワンストップ対応:FP相談を軸に、商品の取り扱いが必要な場合は石田が所属先の登録を用いて対応します
  • 伴走型の継続サポート:年1回以上のフォローアップで継続的に見直し
  • 専門家ネットワーク:税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルタントとの連携体制

📍 FP事務所FPis(エフピス)
東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階(渋谷駅・宮益坂口から徒歩約5分)
対面・オンライン・LINE・電話・メール、すべてに対応。首都圏以外からもオンラインでご相談いただけます。

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