年金から引かれるもの|額面と手取りはどれだけ違うか
「振り込まれた額が、思っていたより少なかったんです」——年金が始まって最初の入金のあと、こうおっしゃる方は少なくありません。ねんきん定期便に書かれているのは額面で、実際に口座に入るのは、そこからいくつかを引いたあとの金額です。この記事では、年金から何が引かれるのか、それがいつ始まるのかを順に整理します。
📌 この記事の要点
- 年金は額面のまま振り込まれず、保険料と税が天引きされたあとの金額が入る
- 天引き(特別徴収)の対象になるのは、年金が年額18万円以上の方
- 引かれるのは介護保険料・医療保険料・住民税・所得税の4つ
- 介護保険料の天引きが先で、医療保険料の天引きはそれが前提になる
- 天引きはすぐには始まらない。最初のうちは納付書で納める期間がある
年金は、額面のまま振り込まれるわけではない
ねんきん定期便やねんきんネットに表示されるのは額面の金額です。実際の振込額は、介護保険料・医療保険料・住民税・所得税を差し引いたあとの金額になります。差は人によって異なり、額面の1割前後になることもあります。
給与明細を思い出していただくと分かりやすいかもしれません。総支給額と手取りが違うのと同じことが、年金でも起きます。
年金の振込は偶数月
公的年金は、原則として偶数月の15日に、前の2か月分がまとめて振り込まれます。2月には12月分と1月分、4月には2月分と3月分、という形です。天引きも、この2か月分に対して行われます。
💡 Cさん(65歳・女性)は、年金額の通知を見て「月あたり約14万円」と計算していらっしゃいました。実際の振込は2か月分で約25万円。差し引かれていたのは介護保険料と住民税でした。「引かれること自体は聞いていたけれど、額を見て初めて実感しました」とおっしゃっていました。
「特別徴収」という呼び方
年金からの天引きは、制度上特別徴収と呼ばれます。ご自身で納付書を使って納めるのが普通徴収です。年金が年額18万円以上の方は、原則として特別徴収の対象になります。
年金から引かれる4つのもの
年金から天引きされるのは、介護保険料、医療保険料(国民健康保険料または後期高齢者医療保険料)、住民税および森林環境税、所得税および復興特別所得税の4つです。それぞれ対象となる年齢と条件が異なります。
| 引かれるもの | 対象年齢 | 条件 |
|---|---|---|
| 介護保険料 | 65歳以上 | 年金が年額18万円以上 |
| 国民健康保険料(税) | 65〜74歳 | 年金が年額18万円以上。介護保険料が天引きされていること |
| 後期高齢者医療保険料 | 75歳以上(一定の場合65〜74歳) | 年金が年額18万円以上。介護保険料が天引きされていること |
| 住民税・森林環境税 | 65歳以上 | 老齢・退職を理由とする年金が年額18万円以上 |
| 所得税・復興特別所得税 | 年齢を問わない | 課税対象となる年金額を超える場合 |
(出典:日本年金機構「年金からの介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、住民税および森林環境税の特別徴収」)
⚠️ 介護保険料と医療保険料の合計が、その支払期の年金額の2分の1を超える場合は、医療保険料は天引きの対象外となり、納付書などで納めることになります。
介護保険料|65歳になった月から、扱いが変わる
介護保険料は65歳から第1号被保険者となり、それまでの医療保険料と一緒の納付から切り離されます。所得段階に応じて保険料が決まり、年金が年額18万円以上であれば天引きが始まります。市区町村ごとに金額が異なります。
65歳より前は、介護保険料は健康保険料と一緒に納めています。65歳になると、これが切り離されて単独の保険料になります。
金額は所得段階で決まる
介護保険料は市区町村が定める基準額をもとに、本人と世帯の所得に応じた段階に区分して決まります。段階の数や金額は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口でご確認ください。
遺族年金・障害年金を受け取っている場合
遺族年金と障害年金は所得税・住民税がかかりません。ただし、介護保険料の特別徴収については、これらの年金も対象年金に含まれます。つまり、税金は引かれないが、介護保険料は引かれるという形になります。
💡 配偶者を亡くされて遺族厚生年金を受け取っている方から「非課税と聞いたのに引かれている」とご相談を受けることがあります。引かれているのは税ではなく、介護保険料であることがほとんどです。通知書の内訳をご覧いただくと確認できます。
医療保険料|65歳から74歳と、75歳から
医療保険料は、65歳から74歳までは国民健康保険料、75歳からは後期高齢者医療保険料になります。どちらも年金からの天引きの対象ですが、介護保険料が天引きされていることが前提です。口座振替に変更できる場合もあります。
75歳で切り替わる
| 年齢 | 加入する制度 | 保険料の決まり方 |
|---|---|---|
| 65〜74歳 | 国民健康保険(または被用者保険) | 前年の所得と世帯の人数がもと。市区町村により計算が異なる |
| 75歳以上 | 後期高齢者医療制度 | 都道府県の広域連合が定める。均等割+所得割 |
75歳の誕生日を迎えると、それまでの健康保険から自動的に後期高齢者医療制度へ移ります。ご家族の扶養に入っていた方も、この時点でご自身が被保険者になります。
口座振替に変えられることがある
市区町村によっては、申し出により天引きから口座振替に変更できる場合があります。口座振替にすると、生計を同じくするご家族の口座から納めて社会保険料控除をその方に寄せる、といった選択ができることがあります。取り扱いは自治体によって異なりますので、窓口でご確認ください。
住民税と所得税|引かれる人と、引かれない人
住民税は65歳以上で老齢・退職年金が年額18万円以上の方が天引きの対象です。所得税は公的年金等控除を差し引いた結果、課税対象が残る場合に源泉徴収されます。扶養親族等申告書を出しているかどうかで税率が変わります。
公的年金等控除がある
年金は雑所得として扱われますが、公的年金等控除が差し引かれます。控除額は年齢と年金額によって変わり、65歳以上の方は最低110万円、65歳未満の方は最低60万円です。(出典:国税庁「公的年金等の課税関係」)
このため、年金以外に収入がなく、金額が控除の範囲に収まる方は所得税がかかりません。
扶養親族等申告書は出しておく
⚠️ 日本年金機構から毎年送られてくる「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出しないと、各種の控除が反映されないまま源泉徴収されることがあります。配偶者やご家族を扶養している方は、提出の有無で手取りが変わります。届いたら期限までに返送してください。
非課税の年金
障害年金と遺族年金は、所得税も住民税もかかりません。老齢年金だけが課税の対象です。
天引きはすぐに始まらない|最初の1年のずれ
年金が始まってすぐに天引きが始まるわけではありません。市区町村が年金の受給を把握してから手続きが行われるため、半年から1年ほどは納付書や口座振替で納める期間があります。この間は手取りが多く見えます。
ここが、最初の年にとまどいやすいところです。
よくある流れ
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 年金が始まった直後 | 天引きはまだ始まらない。額面に近い金額が振り込まれる |
| 数か月後 | 介護保険料・住民税の納付書が自宅に届く(普通徴収) |
| 半年〜1年後 | 天引き(特別徴収)が始まる。振込額が下がる |
💡 Dさん(66歳・女性)は、年金が始まった年の振込額をもとに生活費を組み立てていらっしゃいました。翌年に天引きが始まり、振込額が下がったところで「年金が減らされた」と心配されてご相談にみえました。減ったのではなく、納め方が納付書から天引きに変わっただけでした。
最初の年の振込額は、そのまま続く金額ではないとお考えください。生活費の見通しを立てるときは、天引きが始まったあとの金額で組むほうが安全です。
手取りを見通すために、確認しておきたいこと
年金の手取りを知るには、額面から介護保険料・医療保険料・住民税・所得税の見込みを差し引きます。市区町村の窓口で保険料の試算ができ、ねんきんネットで額面を確認できます。年に一度、通知書で内訳を見る習慣が役に立ちます。
確認する場所
- 年金の額面:ねんきんネット、または毎年6月ごろに届く年金額改定通知書
- 天引きの内訳:年金振込通知書。何がいくら引かれているかが記載されています
- 介護保険料・医療保険料の見込み:お住まいの市区町村の窓口
- 住民税の見込み:市区町村の課税担当窓口
手取りが変わるタイミング
以下のときは、手取りが変わることがあります。
- 65歳になったとき(介護保険料が単独になる)
- 75歳になったとき(後期高齢者医療制度へ移る)
- 働くのをやめた翌年(前年所得が下がり、保険料と住民税が下がる)
- 配偶者を亡くされたとき(世帯の所得が変わり、保険料の段階が変わることがある)
とくに働くのをやめた翌々年は、負担が軽くなることが多い時期です。そこまでの数年をどう乗り切るかが、家計の組み立てでは大切になります。
年金の手取りから、生活費を組み立てる
年金の手取りが分かったら、毎月の固定費と比べます。差額が貯蓄からの取り崩し額になります。ここまで出せば、資産がどのくらい持つかを考える準備が整います。額面ではなく手取りで組むことが出発点です。
手取りを把握する目的は、「毎月いくら足りないか」をはっきりさせることにあります。
3つの数字を並べる
| 数字 | 調べ方 |
|---|---|
| ① 年金の手取り(月あたり) | 年金振込通知書の振込額 ÷ 2 |
| ② 毎月の生活費 | 通帳とカード明細の1年分を12で割る |
| ③ 差額(毎月の取り崩し額) | ② − ① |
③がマイナス(年金だけで足りる)の方もいらっしゃれば、月に数万円の取り崩しが続く方もいらっしゃいます。どちらが良い悪いではなく、金額が分かることが大切です。
💡 ③が分かると、「いまの資産が何年もつか」がおおまかに見えます。そのうえで、働く期間を延ばす、繰り下げを検討する、支出を見直す、といった選択肢を比べられるようになります。順番としては、手取りを知るのが先です。
よくある質問
年金からの天引きについて、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。金額の内訳と、天引きが始まる時期に関するものが中心です。
年金から引かれるものは何ですか?
いくらから天引きの対象になりますか?
天引きはいつから始まりますか?
遺族年金からも引かれますか?
介護保険料はいくらですか?
年金の振込はいつですか?
天引きをやめて口座振替にできますか?
75歳になると何が変わりますか?
扶養親族等申告書を出さないとどうなりますか?
年金だけで暮らす場合、所得税はかかりますか?
東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由
FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系のFP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務したのち、2025年4月に独立しました。ご相談は、お手元の数字を一枚に並べて全体を見えるようにするところから始めています。
石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表
CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。ライフプラン・保険・資産運用・相続のご相談に対応しています。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。
対応エリア:東京都渋谷区周辺・首都圏全域(オンライン可)
「70歳まで働き続けたい。
だからこそ、今このタイミングで独立するべきだ」
石田は第一生命に35年間勤め、本社所属のFPとして多くのお客様に向き合ってきました。40代で個人向け営業の最前線に立った4年間は「会社人生で最も充実していた」と振り返るほど手応えのある日々でした。
とりわけ印象に残っているのが、ご家族への寄り添いサポートです。複雑な手続きを一緒に進めてさしあげると「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただきました。「お客様の役に立てる喜び」——その体験が石田の原点です。
2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。
📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)
FPisが提供できる5つの強み
- 独立系のFP事務所:特定の金融機関に雇用されていないため、転勤で担当が変わることがありません
- 報酬の出どころを開示:いただく報酬がどこから来ているかを「なぜ無料なのか」にすべて書いています
- ワンストップ対応:FP相談を軸に、商品の取り扱いが必要な場合は石田が所属先の登録を用いて対応します
- 伴走型の継続サポート:年1回以上のフォローアップで継続的に見直し
- 専門家ネットワーク:税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルタントとの連携体制
📍 FP事務所FPis(エフピス)
東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階(渋谷駅・宮益坂口から徒歩約5分)
対面・オンライン・LINE・電話・メール、すべてに対応。首都圏以外からもオンラインでご相談いただけます。
手取りが分かると、この先の見通しが立てられます
FP事務所FPisは、初回90分のご相談を無料でお受けしています。年金振込通知書をお持ちいただければ、内訳を一緒に確認し、毎月の生活費との差額まで並べて整理します。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資判断の推奨を目的とするものではありません。制度の内容や税の取り扱いは改正されることがあります。記載は執筆時点の公表情報にもとづいており、実際のお手続きにあたっては公的機関の最新の案内をご確認ください。
個別の税務の判断については税理士に、法律の判断については弁護士・司法書士にご相談ください。社会保険・雇用保険の個別の取り扱いについては、年金事務所・ハローワークにご確認ください。運用による成果を保証するものではなく、金融商品には元本割れの可能性があります。
FP事務所FPis(東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階)/代表 石田健雄(CFP・1級FP技能士)

