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おひとりさまが認知症に備える|預金が動かせなくなる前に

おひとりさまが認知症に備える|預金が動かせなくなる前に

ご自身の判断能力が下がったとき、代わりに預金を動かす人がいる。ご家族がいる方は、ここをあまり意識せずに過ごせます。おひとりさまの場合は、その「代わりの人」を自分で決めておかないと誰もいないことになります。この記事では、金融機関の窓口で何が起きるのか、元気なうちに決めておける選択肢は何か、そしてどの順番で手をつけるとよいかを整理します。

石田健雄 FP事務所FPis代表

執筆:石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表

CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。東京都渋谷区。

CFP1級FP技能士独立系FP渋谷

📌 この記事の要点

  1. 判断能力が下がると、本人名義の預金は本人以外が動かせなくなります。おひとりさまの場合、代わりに動かす人を先に決めておく必要があります。
  2. 金融機関の代理人届(代理人指名手続き)は、元気なうちに申し込む仕組みです。手数料がかからない金融機関もあり、最初に検討したい選択肢です。
  3. 任意後見契約は公正証書で結び、判断能力が下がったあとに家庭裁判所が監督人を選任して効力が生じます。監督人への報酬が続く点を見込んでおきます。
  4. 財産管理等委任契約・見守り契約・死後事務委任契約を組み合わせると、判断能力が下がる前と亡くなったあとの空白を埋められます。
  5. 費用と手間がかかる順に並べると代理人届→委任契約→任意後見です。すべてを一度に決める必要はなく、年齢と状況に合わせて重ねていく形が現実的です。
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判断能力が下がると、預金はどうなるか

金融機関が本人の判断能力の低下を把握すると、本人名義の口座は原則として本人以外が動かせなくなります。おひとりさまの場合、代わりに手続きをする人があらかじめ決まっていないと、支払いが止まります。

「口座が凍結される」という言い方をよく耳にしますが、実際に起きることはもう少し具体的です。

場面 起きること
窓口で高額の引き出しを申し出たとき ご本人の意思と状況の確認が行われ、確認がとれない場合は手続きが止まります
定期預金を解約しようとしたとき 同様に確認が行われます
投資信託を売却しようとしたとき 意向の確認がより慎重に行われます
自動引き落とし こちらは継続します。口座残高がある限り引き落とされます

注意したいのは、入ってくるお金と自動で出ていくお金は動き続けるのに、自分の判断で動かす部分だけが止まるという形になることです。施設に入るためにまとまったお金が必要になった、自宅の修繕費を払いたい、といった場面で困ることになります。

ご家族がいる場合との違い

全国銀行協会は2021年2月に、認知判断能力が低下したお客様への対応についての考え方を公表しています。そこでは、ご親族などが本人の医療費などのために払い戻しを求める場合に、無条件ではないものの応じうる場合があることが示されています。

⚠️ この枠組みは「ご親族など」が前提です。おひとりさまの場合、窓口に来て事情を説明してくれる人そのものがいません。だからこそ、元気なうちに「この人に頼む」を書面にしておく意味があります。

最初に検討したい、金融機関の代理人届

多くの金融機関が、元気なうちに代理人を届け出ておく仕組みを用意しています。手数料がかからない場合も多く、手間の少なさからいって最初に検討したい選択肢です。

名称は金融機関によって異なり、代理人届、代理人指名手続き、予約型代理人サービスなどと呼ばれます。内容もそれぞれ違いますが、おおまかには次のような仕組みです。

  • ご本人が判断能力のあるうちに、代理人となる方を金融機関に届け出ます
  • ご本人の判断能力が下がったあとに、その代理人が一定の範囲で手続きできます
  • 代理人には専用のカードが発行される場合があります
  • できる範囲は金融機関ごとに決まっており、引き出しのみ、解約も可、など幅があります

届け出られる範囲を確認しておきます

おひとりさまの場合、代理人を誰にするかが先に問題になります。きょうだい、甥姪、長年のご友人。金融機関によっては、代理人を二親等以内の親族などに限っている場合があります。ご友人を立てたい場合は、その金融機関で可能かどうかを先に確認する必要があります。

📌 窓口で確認したい5点
①代理人になれる人の範囲(親族に限られるか)
②手数料がかかるか
③代理人ができる手続きの範囲(引き出し・解約・振込)
④1日あたり・1回あたりの金額の上限
⑤投資信託など預金以外も対象になるか

Aさんの例

50代後半で独身のAさんは、給与振込口座とは別に、退職金の受け皿にする予定の口座を持っていました。代理人届について調べたところ、メインで使っている金融機関は姪を代理人にできる一方、もう1行は親族の範囲がより狭く、姪は対象外であることがわかりました。Aさんは対象外だった金融機関の残高を、対象になる金融機関へ移す方向で検討を進めています。

任意後見契約|判断能力が下がったあとを決めておく

任意後見契約は、判断能力があるうちに後見人になる方と公正証書で契約を結び、判断能力が下がったあとに家庭裁判所が監督人を選任して効力が生じる仕組みです。代理人届より広い範囲をカバーできます。

代理人届は、その金融機関の、その口座についての仕組みです。これに対して任意後見契約は、財産全体と、施設への入所契約などの身の回りの手続きまでを対象にできます。

効力が生じるまでの流れ

  1. 任意後見人になってくれる方を決め、お願いする内容を話し合います
  2. 公証役場で公正証書により任意後見契約を結びます(契約は登記されます)
  3. 判断能力が下がった段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます
  4. 監督人が選任された時点で、任意後見人としての仕事が始まります

⚠️ 契約を結んだ時点では、まだ何も始まりません。申立てをする人がいないと、契約があっても効力が生じないままになります。おひとりさまの場合は、見守りをしてくれる方との契約を合わせて結び、「この状態になったら申し立てる」役割を明確にしておく形が一般的です。

見込んでおきたい費用

費目 内容
公正証書の作成 公証役場の手数料・登記にかかる費用など。一度きりの費用です
任意後見人への報酬 契約で定めます。ご親族に無報酬でお願いする場合もあります
任意後見監督人への報酬 家庭裁判所が決めます。効力が生じてから亡くなるまで続きます

金額は事案や管理する財産額によって変わります。監督人への報酬は長期にわたって続く費用ですので、見込みを立てておくことをお勧めします。具体的な金額や手続きについては、公証役場や弁護士・司法書士にご確認・ご相談ください。

前後の空白を埋める3つの契約

任意後見は判断能力が下がったあとの仕組みです。その前の時期と、亡くなったあとは対象外になります。見守り契約・財産管理等委任契約・死後事務委任契約を組み合わせて空白を埋めます。

時間の流れで並べると、カバーされる範囲の違いがはっきりします。

時期 仕組み できること
元気なとき 見守り契約 定期的な連絡・訪問で状況を確認してもらいます
体は不自由だが判断はできる 財産管理等委任契約 入院中の支払いなどを代わりにしてもらいます
判断能力が下がった 任意後見契約 財産管理と身上保護の全体を任せます
亡くなったあと 死後事務委任契約 葬儀・納骨・各種解約・遺品の整理などを任せます

死後事務委任契約が必要になる理由

任意後見人の仕事は、ご本人が亡くなった時点で終わります。ところが、亡くなったあとにも葬儀、住まいの明け渡し、公共料金や携帯電話の解約、施設への未払い分の精算といった手続きが残ります。ご家族がいればその方々が担う部分です。おひとりさまの場合、この部分を引き受ける契約を別に結んでおかないと、宙に浮きます。

📌 遺言書との違い
遺言書は「財産を誰に渡すか」を決めるものです。葬儀の方法や解約手続きといった事務は、遺言書に書いても法的な拘束力がありません。財産の行き先は遺言書、亡くなったあとの事務は死後事務委任契約。この2つは役割が違います。

誰に頼むか|親族・専門職・法人

任せる相手は、ご親族、弁護士や司法書士などの専門職、社会福祉協議会や民間の法人という3つの方向があります。費用と継続性のどちらを重く見るかで選び方が変わります。

相手 費用の目安 考えておきたい点
ご親族(きょうだい・甥姪) 無報酬または少額で引き受けていただける場合があります ご自身と年齢が近い場合、先に体調を崩される可能性があります
弁護士・司法書士など 契約で定めます。継続的な報酬が発生します 専門性があり、手続きの確実性が高くなります
社会福祉協議会・民間法人 法人により幅があります 個人と違い担当者が替わっても継続します。サービス内容と財務状況の確認が要ります

日常生活自立支援事業という選択肢もあります

各地の社会福祉協議会が行っている事業で、判断能力が十分でない方の日常的なお金の管理や、通帳などの預かりを支援する仕組みです。任意後見ほど広くはありませんが、費用を抑えやすく、まず相談先として知っておきたい窓口です。お住まいの地域の社会福祉協議会にご確認ください。

Bさんの例

60代前半で独身のBさんは、最初、同い年のご友人に任意後見人をお願いするつもりでした。ただ話し合ううちに「自分が先にわからなくなる可能性もある」とご友人から言われ、考え直されました。最終的には司法書士と任意後見契約を結び、見守り役はご友人にお願いする形に落ち着いています。

50代のうちにできる、手をつける順番

すべてを一度に決める必要はありません。費用と手間が小さい順に、代理人届、財産の整理、委任契約の検討、任意後見という順で重ねていく形が現実的です。

ステップ1|口座と資産の数を減らします

備えの第一歩は、代わりに動かす人の負担を減らしておくことです。使っていない口座、少額のまま残っている証券口座、満期を過ぎた保険。数が多いほど、代理人も後見人も把握に時間がかかります。

ステップ2|主要な金融機関で代理人届を出します

費用がかからない場合が多く、効果も具体的です。まとまった資産を置いている金融機関から順に確認していきます。

ステップ3|任せる相手の候補を決めます

ここがいちばん時間のかかる部分です。親族、ご友人、専門職、法人。相手がいて初めて契約が成り立ちます。候補が見つからない場合は、社会福祉協議会や地域包括支援センターにご相談ください。

ステップ4|契約を書面にします

見守り契約と財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約。これらをまとめて公正証書で結ぶ形が一般的です。遺言書もあわせて作成される方が多くいらっしゃいます。

📌 35年の実務のなかで
おひとりさまの方からのご相談で多いのは「何から手をつければよいかわからない」という状態です。お話をうかがうと、資産の問題より、任せられる相手が思い浮かばないことが止まっている理由であることがほとんどです。この部分は時間がかかりますので、50代のうちから考え始めておく意味があります。

おひとりさまの認知症への備えについてよくあるご質問

おひとりさまの方からいただく、判断能力が下がったあとのお金についてのご質問をまとめました。代理人届、任意後見、費用、相談先を扱っています。

代理人届を出しておけば、任意後見は要りませんか。
対象が異なります。代理人届はその金融機関の手続きについての仕組みで、施設への入所契約や自宅の売却などは対象外です。まず代理人届から始めて、年齢や状況に応じて任意後見を重ねる形をお勧めしています。
任意後見契約は、結んだらすぐ効力が生じますか。
生じません。判断能力が下がった段階で家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て、監督人が選ばれた時点から始まります。申し立てる人がいないと効力が生じないままになりますので、見守り役を決めておく形が一般的です。
頼める親族も友人もいません。どうすればよいですか。
弁護士・司法書士などの専門職、社会福祉協議会、民間の法人といった選択肢があります。お住まいの地域包括支援センターや社会福祉協議会が最初の相談先になります。
費用はどのくらいかかりますか。
公正証書の作成費用のような一度きりの費用と、後見人や監督人への報酬のような継続する費用があります。金額は管理する財産額や依頼する相手によって変わりますので、公証役場や専門職の方にご確認ください。
法定後見と任意後見はどう違いますか。
任意後見はご本人が元気なうちに相手と内容を決める仕組みです。法定後見は判断能力が下がったあとに家庭裁判所が後見人を選ぶ仕組みで、誰が選ばれるかをご本人が決めることはできません。
家族信託はおひとりさまでも使えますか。
家族信託は財産を託す受託者が必要です。信頼できる親族がいない場合は、信託銀行などの商品や、ほかの仕組みとの組み合わせを検討することになります。個別の設計については司法書士・弁護士にご相談ください。
遺言書を書いておけば、死後の手続きも任せられますか。
遺言書は財産を誰に渡すかを定めるものです。葬儀の手配や各種の解約といった事務については法的な拘束力がありませんので、死後事務委任契約を別に結んでおく形になります。
預金を複数の金融機関に分けていますが、全部で代理人届が要りますか。
すべてで出す必要はありませんが、まとまった残高のある金融機関では出しておくほうが実務的です。この機会に使っていない口座を整理されることもお勧めしています。
投資信託を持っています。代理人は売却できますか。
金融機関によって扱いが異なります。預金の引き出しのみを対象としている場合もありますので、証券口座や投資信託が対象になるかを窓口でご確認ください。
何歳までに決めておくべきですか。
判断能力があるうちでなければ契約を結べませんので、期限は年齢ではなく状態で決まります。任せる相手を探すところから時間がかかりますので、50代のうちに考え始めておかれる方が増えています。

東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由

FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系FP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務し、100世帯超のお客様のお金の課題に向き合ってきました。おひとりさまの老後の備えと財産管理について、FP相談・保険・証券をワンストップでご相談いただけます。

石田健雄 FP事務所FPis代表

石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表

CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。100世帯超のライフプラン・保険・資産運用・相続をサポート。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。

対応エリア:東京都渋谷区周辺・首都圏全域(オンライン可)

▶ 日経BP(日経ビジネス Human Capital)に取材掲載

「70歳まで働き続けたい。
だからこそ、今このタイミングで独立するべきだ」

石田は第一生命に35年間勤め、本社所属のFPとして多くのお客様に向き合ってきました。40代で個人向け営業の最前線に立った4年間は「会社人生で最も充実していた」と振り返るほど手応えのある日々でした。

とりわけ印象に残っているのが、ご家族への寄り添いサポートです。複雑な手続きを一緒に進めてさしあげると「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただきました。「お客様の役に立てる喜び」——その体験が石田の原点です。

2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。

📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)

FPisが提供できる5つの強み

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📍 FP事務所FPis(エフピス)
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