再雇用で給与が下がったとき|手取りと給付の考え方
「同じ仕事なのに、給与が6割になりました」——定年後の再雇用でよく聞くお話です。金額だけを見ると気持ちが沈みます。ただ、下がるのは額面で、そこから引かれるものも同時に変わります。使える給付もあります。この記事では、再雇用で給与が下がったときに何が起きるのかを、手取りの目線で整理します。
📌 この記事の要点
- 再雇用で額面が下がると、社会保険料も下がるため、手取りの下がり方は額面ほどではないことがある
- 60歳時点の賃金より75%未満に下がった場合、雇用保険の高年齢雇用継続給付の対象になり得る
- 2025年4月から給付率の上限が15%から10%に引き下げられた
- 社会保険料を早く下げる「同日得喪」という手続きがある
- 年金を受け取りながら働く場合は在職老齢年金の基準(令和8年度は65万円)も併せて見る
定年後の再雇用で、何が起きるか
定年後に再雇用されると、多くの場合は給与が下がります。同時に、社会保険料の計算のもとになる標準報酬月額も見直され、雇用保険の給付が使えることがあります。額面だけでなく、引かれるものと受け取れるものを合わせて見ます。
ご相談にみえる方の多くは、額面の減り方に気持ちを持っていかれています。まず落ち着いて、動くものを全部並べます。
同時に動く4つのもの
| 動くもの | 方向 |
|---|---|
| 給与(額面) | 下がる |
| 社会保険料(健康保険・厚生年金) | 下がる(手続き次第で時期が変わる) |
| 雇用保険の高年齢雇用継続給付 | 条件を満たせば受け取れる |
| 老齢厚生年金(受給中の場合) | 給与との合計によっては一部止まる |
💡 Gさん(60歳・女性)は、再雇用で額面が月38万円から24万円になりました。「4割近く減った」と落ち込んでいらっしゃいましたが、社会保険料の減少と高年齢雇用継続給付を合わせると、手取りの減り方は額面ほどではありませんでした。「減ることは変わらないけれど、見通しが立ちました」とおっしゃっていました。
高年齢雇用継続給付とは
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者が、60歳時点と比べて賃金が75%未満に下がった場合に支給される給付です。被保険者であった期間が5年以上あることが要件です。ハローワークで手続きします。
おもな要件
- 年齢:60歳以上65歳未満
- 雇用保険の被保険者期間:原則5年以上
- 賃金の低下:60歳時点の賃金と比べて75%未満に下がっていること
- 雇用保険の被保険者として働き続けていること
2種類ある
| 種類 | 対象 |
|---|---|
| 高年齢雇用継続基本給付金 | 失業給付(基本手当)を受けずに働き続ける方 |
| 高年齢再就職給付金 | 基本手当を受けたあと、支給日数を残して再就職した方 |
定年後にそのまま同じ会社で再雇用される方は、多くの場合基本給付金のほうにあたります。
⚠️ 賃金の低下は60歳到達時点の賃金と比べます。60歳より前にすでに下がっていた場合や、60歳以降に段階的に下がる場合は、判定の基準が変わることがあります。ご自身のケースはハローワークでご確認ください。
2025年4月から給付率が下がった
高年齢雇用継続給付の最高給付率は、2025年4月1日から15%が10%に引き下げられました。2025年4月1日以降に60歳に達する方が対象です。制度は段階的に縮小される方向で議論が進んでいます。
ここは、数年前の情報のままだと金額が合わなくなるところです。
| 60歳に達した時期 | 最高給付率 |
|---|---|
| 2025年3月31日まで | 賃金の15% |
| 2025年4月1日以降 | 賃金の10% |
給付率は賃金の下がり方に応じて決まります。下がり方が小さいほど給付率も低くなり、75%以上のところでは支給されません。
💡 たとえば60歳時点の賃金が月40万円で、再雇用後が月24万円(60%)になった場合、最高給付率の対象になります。2025年4月以降に60歳に達した方であれば、支給額は再雇用後の賃金24万円に対して10%、月24,000円が目安です。実際の額は賃金月額の上限・下限や日数によって変わりますので、ハローワークでご確認ください。
制度そのものが今後さらに縮小・廃止される方向で検討されています。数年先の前提としては、あてにしすぎないほうが安全です。
社会保険料を早く下げる「同日得喪」
定年退職後に間をおかず再雇用される場合、資格を同じ日に喪失・取得する手続きにより、再雇用後の給与に応じた社会保険料へすぐに切り替えられます。通常の改定を待つと数か月ずれるため、手続きの有無で手取りが変わります。
社会保険料は標準報酬月額をもとに決まります。通常、給与が変わってから保険料に反映されるまでには数か月かかります。
待つと、どうなるか
給与は下がっているのに、保険料は下がる前の高い給与をもとに計算されたままという期間が生まれます。手取りがいちばん苦しくなるのがこの時期です。
同日得喪という手続き
定年退職し、1日も空けずに同じ事業所で再雇用される場合、いったん被保険者資格を喪失し、同じ日に取得し直す手続きが認められています。これにより、再雇用された月から新しい給与に応じた標準報酬月額が適用されます。
⚠️ この手続きは会社が行うものです。ご本人が申し出るものではありませんが、行われているかどうかで数か月分の保険料が変わります。再雇用の条件を確認するときに、人事・総務に一度尋ねてみる価値があります。
厚生年金保険料が下がると、将来の年金も
保険料が下がるということは、その期間に積み上がる報酬比例部分も小さくなるということです。手取りは増えますが、将来の年金の増え方はゆるやかになります。どちらを重く見るかは、働く期間の長さによって変わります。
年金を受け取りながら働く場合
老齢厚生年金を受け取りながら働くと、年金の月額と給与の合計が基準を超えた場合に年金の一部が止まります。令和8年度の支給停止調整額は65万円です。基準は毎年度改定されます。
在職老齢年金のしくみ
基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額)と、総報酬月額相当額(標準報酬月額+直近1年の賞与の12分の1)の合計が支給停止調整額を超えると、超えた分の2分の1にあたる年金が支給停止になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給停止調整額(令和8年度) | 65万円 |
| 止まる額 | (基本月額+総報酬月額相当額 − 65万円)÷ 2 |
| 止まる対象 | 老齢厚生年金のみ。老齢基礎年金は止まらない |
(出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」)
💡 支給停止調整額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。2025年の制度改正で基準額を62万円に引き上げることが決まり、そのうえで令和8年度の改定を経た金額が65万円です。数字を使って判断されるときは、その年度の金額をご確認ください。
多くの方は、この基準に届かない
基本月額と給与の合計が月65万円というのは、再雇用で給与が下がった方にとってはかなり高い水準です。心配されてご相談にみえる方のうち、実際に停止の対象になる方は多くありません。まずはご自身の数字をあてはめてみてください。
手取りで見ると、どうなるか
額面の減少、社会保険料の減少、高年齢雇用継続給付を合わせると、手取りの減り方は額面の減り方より小さくなることが一般的です。ただし給付は課税対象外である一方、金額そのものは大きくありません。
並べて見る順番
- 再雇用後の額面を確認する
- 再雇用後の社会保険料を確認する(同日得喪の有無で時期が変わる)
- 高年齢雇用継続給付の見込額をハローワークで確認する
- 年金を受け取っている場合は在職老齢年金の判定をする
- ①−②+③(+④)で手取りを出す
💡 Gさん(前出・60歳)の場合、額面は38万円から24万円へ約37%減。一方で社会保険料の負担が下がり、高年齢雇用継続給付が加わったことで、手取りの減り方は3割弱にとどまりました。「4割減ると思い込んでいたので、気持ちの準備が変わりました」
高年齢雇用継続給付は非課税
雇用保険の給付は所得税・住民税の対象になりません。翌年の保険料の計算にも載りません。額は大きくありませんが、手取りとしてはそのまま残ります。
働き方を決めるときに、見ておきたいこと
再雇用の条件を受け入れるかどうかを考えるときは、手取りだけでなく、厚生年金に加入し続けることの効果、健康保険の継続、働く時間と体力の兼ね合いを合わせて見ます。金額以外の要素も判断材料になります。
金額以外に効いてくること
- 厚生年金に加入し続けられる:報酬比例部分が積み上がり、将来の年金が増えます
- 健康保険が続く:国民健康保険に切り替える場合の保険料と比べてみます
- 雇用保険が続く:65歳以降の離職でも高年齢求職者給付金の対象になり得ます
- 働く時間と体力:週の日数を減らす選択ができるかどうか
週の労働時間が短くなる場合の注意
⚠️ 労働時間を大きく減らすと、社会保険の加入要件を外れることがあります。厚生年金から国民年金へ、健康保険から国民健康保険へ切り替わると、将来の年金の増え方も、保険料の負担も変わります。日数を減らす相談をするときは、加入が続くかどうかを会社に確認してください。
60歳以降も厚生年金に加入し続けることで年金がどう増えるかは、60歳以降も働くと年金はいくら増えるか で詳しく扱います。
再雇用の条件を受け取ったら、確認する順番
再雇用の条件が提示されたら、額面、社会保険の加入状況、同日得喪の有無、高年齢雇用継続給付の見込み、年金との調整の5つを順に確認します。この順に進めると、判断に必要な数字がそろいます。
- 会社に聞く:再雇用後の額面、週の労働時間、社会保険の加入が続くかどうか
- 会社に聞く:同日得喪の手続きをしてもらえるか
- ハローワークで聞く:高年齢雇用継続給付の対象になるか、見込額はいくらか
- 年金事務所で聞く:受給中または受給予定の年金が、働くことでどうなるか
- 自分で出す:手取りの見込みと、いまの生活費との差
ここまでそろえば、受け入れるかどうかを金額で判断できます。「下がるから嫌だ」で決めてしまうと、実際の手取りより厳しく見積もってしまうことがあります。
💡 ご相談では、この5つを一緒に埋めていくことが多くあります。埋まらない欄があるうちは判断を保留していただき、数字がそろってから比べます。迷いの多くは、数字が足りないことから来ています。
よくある質問
定年後の再雇用と給与の低下について、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。給付の条件と、社会保険料に関するものが中心です。
高年齢雇用継続給付はどんな人が対象ですか?
給付率はいくらですか?
給付金に税金はかかりますか?
同日得喪とは何ですか?
同日得喪は自分で申し出るのですか?
働くと年金は止まりますか?
支給停止調整額はいくらですか?
労働時間を減らすと何が変わりますか?
再雇用で厚生年金に入り続ける意味はありますか?
高年齢雇用継続給付はいつまで続きますか?
東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由
FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系のFP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務したのち、2025年4月に独立しました。ご相談は、お手元の数字を一枚に並べて全体を見えるようにするところから始めています。
石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表
CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。ライフプラン・保険・資産運用・相続のご相談に対応しています。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。
対応エリア:東京都渋谷区周辺・首都圏全域(オンライン可)
「70歳まで働き続けたい。
だからこそ、今このタイミングで独立するべきだ」
石田は第一生命に35年間勤め、本社所属のFPとして多くのお客様に向き合ってきました。40代で個人向け営業の最前線に立った4年間は「会社人生で最も充実していた」と振り返るほど手応えのある日々でした。
とりわけ印象に残っているのが、ご家族への寄り添いサポートです。複雑な手続きを一緒に進めてさしあげると「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただきました。「お客様の役に立てる喜び」——その体験が石田の原点です。
2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。
📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)
FPisが提供できる5つの強み
- 独立系のFP事務所:特定の金融機関に雇用されていないため、転勤で担当が変わることがありません
- 報酬の出どころを開示:いただく報酬がどこから来ているかを「なぜ無料なのか」にすべて書いています
- ワンストップ対応:FP相談を軸に、商品の取り扱いが必要な場合は石田が所属先の登録を用いて対応します
- 伴走型の継続サポート:年1回以上のフォローアップで継続的に見直し
- 専門家ネットワーク:税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルタントとの連携体制
📍 FP事務所FPis(エフピス)
東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階(渋谷駅・宮益坂口から徒歩約5分)
対面・オンライン・LINE・電話・メール、すべてに対応。首都圏以外からもオンラインでご相談いただけます。
再雇用の条件は、手取りに直してから比べられます
FP事務所FPisは、初回90分のご相談を無料でお受けしています。提示された条件をお持ちいただければ、社会保険料と給付を含めた手取りの見込みを一緒に出します。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資判断の推奨を目的とするものではありません。制度の内容や税の取り扱いは改正されることがあります。記載は執筆時点の公表情報にもとづいており、実際のお手続きにあたっては公的機関の最新の案内をご確認ください。
個別の税務の判断については税理士に、法律の判断については弁護士・司法書士にご相談ください。社会保険・雇用保険の個別の取り扱いについては、年金事務所・ハローワークにご確認ください。運用による成果を保証するものではなく、金融商品には元本割れの可能性があります。
FP事務所FPis(東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階)/代表 石田健雄(CFP・1級FP技能士)

