取り崩しはどの口座から|課税口座・NISA・iDeCoの順番
「いくら貯めればいいか」は、よく聞かれる質問です。その次に来るのに、あまり語られないのが「どこから使えばいいか」です。同じ100万円を使うのでも、預金から引き出すのと、課税口座で投資信託を売るのとでは、手元に残る額も、翌年の保険料も変わります。この記事では、口座ごとの違いと、取り崩す順番の考え方を整理します。
📌 この記事の要点
- 同じ金額を使うのでも、どの口座から出すかで手取りと翌年の負担が変わる
- 課税口座の売却益には20.315%がかかり、さらにその年の所得として扱われる
- NISAの利益は非課税で、所得にも載らない。保険料や医療費の自己負担割合に響かない
- iDeCoは「どの順番か」より「いつ受け取り始めるか」を先に決める
- 基本は預貯金 → 課税口座 → NISA。ただし残す意思や相続の事情で変わる
「いくら必要か」の次に来る、あまり語られない問い
老後資金の話は必要額の計算で終わることが多く、取り崩す順番まで扱われることは多くありません。しかし実際に使い始めると、どの口座から出すかによって税金と社会保険料が変わります。使う段階に入る前に考えておく価値があります。
ご相談のなかで、こんなやりとりがよくあります。
💡 Eさん(62歳・女性)「毎月10万円くらい足りないので、そのぶんを崩していこうと思っています」
——「どこから崩されますか?」
「……考えていませんでした。とりあえず、預金からでしょうか」
多くの方が、ここで一度立ち止まられます。貯めるときは口座を分けて考えていたのに、使うときは一緒くたになりがちだからです。
順番を考えると、何が変わるのか
- その年に納める所得税・住民税
- 翌年の国民健康保険料・介護保険料
- 医療や介護の窓口負担の割合
- 非課税で運用を続けられる期間
金額が大きいほど、差も大きくなります。
口座ごとに、税金と受け取り方の決まりが違う
預貯金、課税口座、NISA口座、iDeCoでは、利益への課税、所得への計上、引き出せる時期がそれぞれ異なります。この違いを一枚に並べると、どこから使うのが自分に合うかを考えやすくなります。
| 口座 | 利益への課税 | 所得に載るか | 引き出し |
|---|---|---|---|
| 預貯金 | 利息に20.315%(源泉分離) | 載らない | いつでも |
| 課税口座(特定・一般) | 譲渡益・配当に20.315% | 載る(申告方法による) | いつでも |
| NISA口座 | 非課税 | 載らない | いつでも |
| iDeCo | 受取時に退職所得または雑所得 | 受取年に載る | 原則60歳以降 |
いちばん見落とされやすいのが「所得に載るか」
税率20.315%の話は比較的よく知られています。見落とされやすいのは、課税口座の売却益がその年の所得として扱われるという点です。
⚠️ 所得が増えると、翌年の国民健康保険料・介護保険料が上がることがあります。さらに、医療や介護の窓口負担の割合の判定にも影響することがあります。税金だけを見て「20%なら」と判断すると、翌年になって思わぬ請求に驚くことがあります。
特定口座(源泉徴収あり)で申告不要を選べば所得に載せずに済む場合もありますが、他の所得や控除との兼ね合いで有利不利が変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。
判断の軸は3つ|税・使う時期・残す意思
取り崩す順番を考えるときの軸は、税と保険料への影響、そのお金を使う時期、そして誰かに残す意思があるかどうかの3つです。この3つが決まれば、順番はおのずと絞られてきます。
①税と保険料への影響
同じ金額を用意するのに、どれだけ余分な負担が生じるかです。預貯金の引き出しはゼロ、NISAの売却もゼロ、課税口座の売却は利益部分に応じて発生します。
②そのお金を使う時期
1年以内に使うお金を値動きのある商品に置いておくと、使いたいときに下がっている可能性があります。近いうちに使うぶんは、値動きのないところに移しておくのが基本です。
③残す意思があるか
すべてを使い切る前提なのか、家族に残したいのかで、最後まで置いておく口座が変わります。この点はご本人の意思の問題で、正解はありません。ただ、決めていないと順番も決まりません。
💡 ご相談では、この3つを紙に書いていただくところから始めることがあります。「税は分かるけれど、残す意思は考えたことがなかった」とおっしゃる方が多く、ここで話が具体的になります。
基本の順番と、その理由
一般的な考え方としては、預貯金、課税口座、NISAの順に取り崩します。負担の軽いものから使い、非課税で運用できる枠を長く残すためです。ただし各人の事情によって順番は変わります。
よく使われる順番
| 順 | 口座 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 預貯金 | 引き出しに税も保険料への影響もない。生活費の当座分をここから |
| 2 | 課税口座 | 売却益に課税されるが、NISAより先に減らすことで非課税枠を長く残せる |
| 3 | NISA口座 | 非課税で運用を続けられる。所得にも載らないため最後まで残す価値がある |
なぜNISAを最後に回すのか
- 非課税で運用できる期間が延びる:置いておくほど非課税の恩恵が積み上がります
- 所得に載らない:いざ大きく使うときも、翌年の保険料や窓口負担の判定に影響しません
- 使いたいときに自由に出せる:引き出しの制限がありません
課税口座を先に減らすときの工夫
課税口座に含み損の銘柄と含み益の銘柄が両方ある場合、同じ年に売って損益を通算することで、その年の課税対象を圧縮できることがあります。年をまたぐと通算できないものもありますので、売る時期を含めて税理士にご確認ください。
iDeCoは「順番」より「いつ受け取り始めるか」が先
iDeCoは原則60歳以降75歳までの間に受け取りを始めます。一時金なら退職所得、年金形式なら雑所得として扱われ、退職金との受け取り時期によって税額が変わります。取り崩しの順番に組み込む前に、受給開始時期を決めておきます。
iDeCoだけは、他の口座と並べて「何番目に使うか」を考えるものではありません。受け取りを始める時期そのものが選択だからです。
受け取り方は3つ
| 受け取り方 | 税の扱い |
|---|---|
| 一時金(一括) | 退職所得。退職所得控除の対象 |
| 年金形式(分割) | 雑所得。公的年金等控除の対象 |
| 併用(一部一時金・残り年金) | それぞれの扱い。運営管理機関によって可否が異なる |
⚠️ 2026年1月1日から、退職金とiDeCo一時金の受け取り時期に関する調整の期間が、5年から10年に延長されました。iDeCoを先に一時金で受け取り、その後に会社の退職金を受け取る順番を考えていた方は、あらためて試算しておくことをおすすめします。税額の個別の判断は税理士にご相談ください。
受け取りを遅らせるという選択
iDeCoは75歳までに受け取りを開始すればよく、それまで運用を続けられます。ただし口座管理手数料は受け取りを終えるまでかかり続けます。残高が小さい場合は、手数料の割合が相対的に大きくなる点も見ておきます。
順番を変えたほうがよい場合
基本の順番があてはまらない場合もあります。相続を意識している方、その年の所得を抑えたい方、まとまった支出が近い方は、別の順番を考えます。前提が違えば結論も変わります。
ケース①|家族に残すことを考えている
NISA口座はご本人が亡くなると非課税の扱いが終わり、相続人の課税口座へ移されます。残すことを主な目的にするなら、NISAを最後まで温存する意味は小さくなります。相続税の扱いを含めた判断は、税理士にご相談ください。
ケース②|その年の所得を抑えたい
医療や介護の窓口負担の割合が変わる境目が近い方は、課税口座の売却をその年に集中させないという考え方があります。数年に分けることで、判定に使われる所得を平準化できる場合があります。
ケース③|まとまった支出が1〜2年以内にある
住み替え、リフォーム、まとまった医療費などの予定がある場合は、その分を先に値動きのない場所へ移しておきます。順番の議論より前に、使う時期が決まっているお金を確保するほうが優先です。
💡 Fさん(64歳・女性)は、退職金で購入した投資信託を課税口座に置いたまま、毎年少しずつ売却されていました。ある年にまとめて売却したところ、翌年の国民健康保険料が上がりました。「税金は覚悟していたけれど、保険料は考えていませんでした」——売る年を分けるだけで変わることもあります。
取り崩すペースを、どう決めるか
毎月定額で取り崩す方法と、資産残高に対する一定割合で取り崩す方法があります。定額は生活が組み立てやすく、定率は資産が長く持ちやすいという性格があります。どちらにも向き不向きがあります。
| 方法 | 特徴 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 定額(毎月〇万円) | 生活費の見通しが立てやすい。相場が下がった年も同じ額を売るため、資産の減りが早まることがある | 年金と合わせて生活費を固定したい方 |
| 定率(残高の〇%) | 相場が下がった年は取り崩す額も減るため、資産が長く持ちやすい。受け取る額が毎年変わる | 生活費に調整の余地がある方 |
| 併用 | 生活費の基礎部分は定額、上乗せは定率 | 固定費と変動費を分けて管理できる方 |
どの方法でも、相場が下がっている年に大きく売らないという点は共通です。そのために、1〜2年分の生活費を値動きのない場所に置いておく考え方があります。
資産の置き場所を用途で分ける考え方は、50代からの資産の色分け でも扱っています。
使う段階に入る前に、一度並べてみる
取り崩しの順番は、口座の一覧と、使う時期の見通しと、残す意思の3つがそろって初めて決められます。使い始めてから考えるより、始める前に一度並べておくほうが選択肢が多く残ります。
並べるのは4つ
- 口座の一覧:どこに、いくら、どんな商品で置いてあるか
- 年金の手取り:毎月いくら入るか(額面ではなく手取りで)
- 毎月の生活費:直近1年の平均
- 使う予定:1〜2年以内のまとまった支出
この4つが出ると、毎月いくら取り崩すか、それをどこから出すかが具体的に決まります。
💡 口座の一覧づくりからという方は、50代からのお金の棚卸し の手順が使えます。順番としては、棚卸しが先、取り崩しの設計が後になります。
取り崩しは、一度決めたら終わりではありません。相場も、ご自身の暮らしも変わります。年に一度見直す前提で、まずは仮でも決めておくほうが、決めないまま使い始めるより見通しが立ちます。
よくある質問
資産の取り崩しについて、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。口座ごとの税金と、順番の決め方に関するものが中心です。
どの口座から取り崩すのがよいですか?
NISAを最後に回すのはなぜですか?
課税口座で売ると、税金以外に何か影響がありますか?
iDeCoはいつ受け取ればよいですか?
退職金とiDeCoの受け取り時期に決まりはありますか?
毎月定額と定率、どちらがよいですか?
相場が下がっている年はどうすればよいですか?
NISAは相続のときどうなりますか?
課税口座の含み損は使えますか?
取り崩しの計画は何年ごとに見直しますか?
東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由
FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系のFP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務したのち、2025年4月に独立しました。ご相談は、お手元の数字を一枚に並べて全体を見えるようにするところから始めています。
石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表
CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。ライフプラン・保険・資産運用・相続のご相談に対応しています。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。
対応エリア:東京都渋谷区周辺・首都圏全域(オンライン可)
「70歳まで働き続けたい。
だからこそ、今このタイミングで独立するべきだ」
石田は第一生命に35年間勤め、本社所属のFPとして多くのお客様に向き合ってきました。40代で個人向け営業の最前線に立った4年間は「会社人生で最も充実していた」と振り返るほど手応えのある日々でした。
とりわけ印象に残っているのが、ご家族への寄り添いサポートです。複雑な手続きを一緒に進めてさしあげると「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただきました。「お客様の役に立てる喜び」——その体験が石田の原点です。
2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。
📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)
FPisが提供できる5つの強み
- 独立系のFP事務所:特定の金融機関に雇用されていないため、転勤で担当が変わることがありません
- 報酬の出どころを開示:いただく報酬がどこから来ているかを「なぜ無料なのか」にすべて書いています
- ワンストップ対応:FP相談を軸に、商品の取り扱いが必要な場合は石田が所属先の登録を用いて対応します
- 伴走型の継続サポート:年1回以上のフォローアップで継続的に見直し
- 専門家ネットワーク:税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルタントとの連携体制
📍 FP事務所FPis(エフピス)
東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階(渋谷駅・宮益坂口から徒歩約5分)
対面・オンライン・LINE・電話・メール、すべてに対応。首都圏以外からもオンラインでご相談いただけます。
どこから使うかは、使い始める前に決めておけます
FP事務所FPisは、初回90分のご相談を無料でお受けしています。口座の一覧と年金の見込額をお持ちいただければ、取り崩す順番とペースを一緒に組み立てます。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資判断の推奨を目的とするものではありません。制度の内容や税の取り扱いは改正されることがあります。記載は執筆時点の公表情報にもとづいており、実際のお手続きにあたっては公的機関の最新の案内をご確認ください。
個別の税務の判断については税理士に、法律の判断については弁護士・司法書士にご相談ください。社会保険・雇用保険の個別の取り扱いについては、年金事務所・ハローワークにご確認ください。運用による成果を保証するものではなく、金融商品には元本割れの可能性があります。
FP事務所FPis(東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階)/代表 石田健雄(CFP・1級FP技能士)

