再就職しない選択をしたとき|固定費から家計を組み直す
早期退職をしたあと、次の仕事を探さない。この選択をとる方が、50代で確実に増えています。ただし、働かないと決めた時点で、収入を増やす手段が実質的になくなります。残るのは、出ていくお金を減らすことです。この記事では、固定費のうちどこから手をつけると効くのかを、金額の大きい順に整理します。変動費の節約とは、効き方がまったく違います。
📌 この記事の要点
- 働かないと決めた場合、調整できるのは支出の側だけになります。なかでも一度下げると翌年以降もずっと効く固定費から手をつけます。
- 金額の大きい順は、多くのご家庭で住居費・保険料・車・通信費です。この順に見ていくと、効果が出るのが早くなります。
- 社会保険料は固定費ですが、下げにくい部分です。退職後1〜2年目は前年の所得で計算されるため、特に重くなります。
- 保険は解約だけが選択肢ではありません。払済・減額・特約の解約など、保障を一部残したまま負担を下げる方法があります。
- 固定費を下げたあと、年間の不足額と資産の残りを突き合わせます。何年もつかが見えて初めて、働かない選択が成り立つかがわかります。
働かないと決めると、動かせるのは支出だけになります
収入を増やす手段を使わないと決めた場合、調整できるのは出ていくお金だけです。なかでも、一度の見直しで翌年以降も効き続ける固定費が中心になります。
家計の見直しというと、食費や日用品を思い浮かべる方が多くいらっしゃいます。ただ、変動費の節約は毎月努力が要るのに対し、固定費は一度見直せばその後は何もしなくても効き続けます。
| 変動費 | 固定費 | |
|---|---|---|
| 例 | 食費、日用品、交際費 | 住居費、保険料、通信費、車、サブスクリプション |
| 見直しの手間 | 毎月続ける必要があります | 一度で済みます |
| 効果の続き方 | 気を緩めると戻ります | 翌年以降も続きます |
| 生活の満足度への影響 | 日々感じやすい部分です | 慣れると気にならないことが多い部分です |
📌 月1万円の固定費を下げると、30年で360万円になります。取り崩す資産を360万円増やすのは難しくても、固定費を月1万円下げることはできる場合があります。働かない選択を考えるとき、ここがいちばん大きな調整幅です。
順番1|住居費|金額がいちばん大きい部分
持ち家か賃貸かにかかわらず、住居費は固定費のなかで最大です。金額が大きいため、見直しの効果も大きくなりますが、同時にいちばん動かしにくい部分でもあります。
賃貸の場合
- 住み替え:家賃を月2万円下げると年24万円、20年で480万円になります
- 更新のタイミング:更新時期に合わせて検討すると、費用の重複を抑えられます
- 通勤を考えなくてよくなった:働かない選択をする場合、職場までの距離という条件が外れます。選べる範囲が広がります
持ち家の場合
| 項目 | 見直しの余地 |
|---|---|
| 住宅ローン | 完済するか、借り換えるか、そのまま続けるか。退職金で完済するかは手元資金とのバランスで判断します |
| 管理費・修繕積立金(マンション) | 下げられません。将来の値上げも見込んでおきます |
| 固定資産税 | 下げられません |
| 火災保険 | 補償内容と保険期間の見直しで下がる場合があります |
| 住み替え | 規模を小さくすることで、光熱費と管理費を含めて下がることがあります |
⚠️ 住宅ローンを退職金で完済するかどうかは、慎重に判断する部分です。完済すれば毎月の支出は確実に減りますが、手元の現金が減ります。働かない選択をする場合、手元資金が減ることの意味が大きくなります。金利、残りの期間、手元に残る金額の3つを並べて比べてください。
順番2|保険料|解約以外の方法があります
50代になると、お子さまの独立などで必要な保障額が下がっていることがあります。保険は解約のほかに、払済や減額といった保障を残したまま負担を下げる方法があります。
見直しの選択肢
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 減額 | 保障額を下げて保険料を下げます。契約は続きます |
| 払済保険 | 以後の保険料の払い込みをやめ、その時点の解約返戻金をもとにした保障に変えます。特約は消滅することが一般的です |
| 特約の解約 | 主契約を残したまま、不要になった特約だけを外します |
| 解約 | 契約を終わらせます。解約返戻金がある場合は受け取れます |
⚠️ 解約する前に確認したい点があります。健康状態によっては、同じ保障に入り直せない場合があります。また医療保険は、加入時期によって現在販売されているものより条件のよい内容になっていることがあります。解約する前に、証券の内容をご確認ください。
見直しの順番
- 死亡保障:お子さまが独立していれば、必要額が下がっている場合があります
- 就業不能・所得補償:働かない選択をする場合、収入を補う保険の必要性が変わります
- 医療保険:公的な高額療養費制度の自己負担の上限を確認したうえで、不足分を考えます
- 個人年金・貯蓄性のある保険:これは支出ではなく積立にあたります。解約すると元本割れする場合がありますので、返戻率を確認してから判断します
Aさんの例
56歳で早期退職されたAさんは、再就職をしない選択をされました。保険証券を並べたところ、お子さまが独立したあとも、就業中の収入を前提とした死亡保障が残っていました。保障額を下げる手続きをとり、月の保険料が下がっています。医療保障の部分は、加入時期が古く条件がよかったため、そのまま残されました。
順番3|車と通信|年額で見ると差が出ます
車の維持費と通信費は、月額では小さく見えても年額にすると大きな金額になります。働かない選択をすると、使い方そのものが変わる部分でもあります。
車の維持費
車の費用は月々の支払いとして見えにくいため、年額で出すことをお勧めします。
- 自動車税
- 自賠責保険・任意保険
- 車検費用(2年ごと)
- 駐車場代
- 燃料代
- タイヤ・バッテリーなどの消耗品
- 買い替えのための積立
📌 通勤に使わなくなると、年間の走行距離が大きく減ります。台数を減らす、より維持費の低い車に替える、カーシェアやタクシーに切り替える。都市部にお住まいで公共交通が使える場合、手放す選択が現実的になることがあります。一方で地方では生活に不可欠ですので、お住まいの地域によって判断が変わります。
通信費とサブスクリプション
| 項目 | 確認する点 |
|---|---|
| 携帯電話 | 仕事で使っていた分のデータ容量が不要になっていないか |
| 固定回線 | 携帯との組み合わせで割引があるか。そもそも必要か |
| 動画・音楽などの定額サービス | 使っていないものが残っていないか |
| 有料の会員サービス | 勤務先の福利厚生で入っていたものが個人負担に変わっていないか |
クレジットカードの明細を12か月分並べると、毎月同じ金額が引き落とされているものが見つかります。そこに、存在を忘れていたサービスが含まれていることがあります。
下げにくい固定費|社会保険料と税金
退職後の社会保険料と住民税は固定費として出ていきますが、前年の所得で決まるため、退職した直後ほど重くなります。下げにくい部分として先に見込んでおきます。
| 費目 | 決まり方 | 重くなる時期 |
|---|---|---|
| 住民税 | 前年の所得で計算します | 退職した翌年 |
| 国民健康保険料 | 前年の所得で計算します(自治体により算定方法が異なります) | 退職した翌年 |
| 国民年金保険料 | 60歳未満の方は定額です | 60歳になるまで |
| 介護保険料 | 40歳以上。65歳以降は年金から天引きされる場合があります | 継続します |
⚠️ 働かない選択をした1年目と2年目は、固定費のなかで社会保険料と住民税の比重がいちばん大きくなります。収入がないのに、前年の収入に対する負担が来るためです。3年目から軽くなりますが、その前の2年間を乗り切る資金を見込んでおく必要があります。
使える仕組みの確認
- 国民健康保険料の軽減:会社都合の離職など一定の要件に該当する場合、前年の給与所得を一定割合として計算する軽減措置があります。お住まいの自治体にご確認ください
- 国民年金保険料の免除・納付猶予:所得の状況によって申請できる場合があります。ただし免除された期間は年金額の計算上、全額納付より少なくなります
税や保険料の具体的な計算、適用される軽減措置については、お住まいの自治体や税務署、税理士にご確認・ご相談ください。
見直したあと、何年もつかを出します
固定費を下げたら、下げたあとの年間支出と、年金が始まるまでの資産の減り方を並べます。何年もつかが見えて初めて、働かない選択が成り立つかがわかります。
並べる手順
- 見直し後の年間支出を出します(固定費+変動費)
- 年金が始まるまでの年数を確認します(65歳までなら、いまが57歳なら8年)
- 年金開始までに必要な金額を出します(年間支出 × 年数)
- 年金開始後の年間不足額を出します(年間支出 - 年金の手取り見込額)
- 手元の資産から3を引き、残りを4で割ります。これが年金開始後に資産がもつ年数です
📌 この計算で見るのは、金額ではなく年数です。「95歳までもつ」のか「82歳で尽きる」のか。年数で出ると、固定費をあといくら下げる必要があるか、あるいは少しでも働く必要があるかが見えてきます。
足りない場合の選択肢
- 固定費をさらに下げます(住居費の見直しがいちばん大きい調整幅です)
- 年金の受け取り方を変えます(繰り下げれば増えますが、待つ間の資金が要ります)
- 短時間でも働く期間を作ります(数年でも、取り崩しを止める効果があります)
- 資産の置き方を見直します(取り崩しながらの運用という考え方があります)
📌 35年の実務のなかで
再就職しない選択をされた方のご相談で、いちばん多く効いたのは住居費の見直しでした。通勤という条件が外れると、住まいに求めるものが変わります。ただし住み替えは心理的な負担も大きい部分です。まずは数字を出して、選択肢として置いておく。決めるのはそのあとで構いません。
再就職しない選択と家計の見直しについてよくあるご質問
早期退職後に再就職をしない選択を検討されている方からいただくご質問をまとめました。固定費の見直し、社会保険料、資産がもつ年数を扱っています。
どこから手をつけるのが効率的ですか。
住宅ローンを退職金で完済すべきですか。
保険は解約するしかありませんか。
退職してすぐ保険料が安くなりますか。
国民健康保険料を下げる方法はありますか。
車は手放したほうがよいですか。
何年もつかはどう計算しますか。
資産が足りない場合はどうすればよいですか。
変動費の節約は意味がありませんか。
見直しはいつから始めればよいですか。
東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由
FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系FP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務し、100世帯超のお客様のお金の課題に向き合ってきました。退職後の家計の組み直しと、資産の取り崩しの設計について、FP相談・保険・証券をワンストップでご相談いただけます。
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CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。100世帯超のライフプラン・保険・資産運用・相続をサポート。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。
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2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。
📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)
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FP事務所FPis(東京都渋谷区)/対面・オンライン・LINE・電話
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の投資判断・契約の勧誘・税務および法律に関する助言を目的とするものではありません。掲載している制度・税制・料率は執筆時点の情報にもとづいており、今後の制度改正により取り扱いが変わる場合があります。
実際の税額・年金額・社会保険料の計算や各種手続きについては、お住まいの自治体、年金事務所、税務署、または税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご確認・ご相談ください。金融商品にはそれぞれ価格変動リスク・為替リスク・信用リスク等があり、運用の成果によっては元本を下回る可能性があります。
FP事務所FPis/代表 石田健雄(CFP・1級FP技能士)。所属先を通じて生命保険・損害保険・金融商品仲介の募集人として登録しています。

