年金は自動では始まりません|請求手続きと受け取り口座の決め方
年齢が来たら振り込まれる。多くの方が、なんとなくそう思っておられます。実際には、年金はご自身で請求しないと始まりません。しかも請求書は3か月前に届き、出すのは誕生日の前日以降。最初の振込までには、そこから1〜2か月かかります。この記事では、何がいつ届き、どこへ何を出すのか、そして受け取りが始まる前に決めておくことを、時系列で整理します。
📌 この記事の要点
- 年金は請求してはじめて支給が始まります。請求しないままだと、受け取れるはずの年金が振り込まれません。さかのぼって受け取れるのは5年分までです。
- 支給開始年齢の3か月前に、日本年金機構から年金請求書が送られてきます。提出できるのは誕生日の前日以降です。
- 年金は偶数月の15日に、前の2か月分がまとめて振り込まれます。毎月入るわけではありません。
- 請求と同時に受け取り口座と扶養親族等申告書を決めます。申告書を出さないと、源泉徴収される税額が変わることがあります。
- 繰り下げを選ぶ場合は請求しないで待ちます。ただし65歳時点で届く書類への対応が必要ですので、「何もしない」とは少し違います。
年金は請求しないと始まりません
公的年金は、受給権が発生しても自動で振り込まれることはありません。ご自身で請求手続きを行い、審査を経てから支給が始まります。請求が遅れた場合、さかのぼれるのは5年分までです。
このしくみは「裁定請求」と呼ばれます。受け取る権利があるかどうかを国が判定し、そのうえで支給が始まる形です。権利があることと、受け取ることは別だとお考えください。
⚠️ 請求には5年の時効があります。請求が遅れた場合、さかのぼって受け取れるのは直近5年分までです。それより前の分は、原則として受け取れなくなります。
届く書類と、その時期
| 時期 | 届くもの | すること |
|---|---|---|
| 59歳のとき | ねんきん定期便(封書・全期間の記録) | 加入記録に漏れがないか確認します |
| 支給開始年齢の3か月前 | 年金請求書(事前送付用) | 記入し、添付書類を準備します |
| 誕生日の前日以降 | — | 年金事務所などへ提出します |
| 提出から1〜2か月後 | 年金証書・年金決定通知書 | 内容を確認します |
| 年金証書が届いてから1〜2か月後 | — | 初回の振込があります |
請求書の提出から最初の振込まで、おおむね2〜4か月かかります。この期間に収入が途切れる場合、預金で埋めることになります。退職の時期と受給開始の時期が近い方は、ここを見込んでおく必要があります。
いまの50代が受け取り始めるのは何歳からか
生年月日によって、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる方と、65歳からになる方に分かれます。いまの50代の多くは65歳からの受給開始になります。
かつては60歳から受け取れた老齢厚生年金が、段階的に65歳へ引き上げられてきました。引き上げの途中にあたる世代には「特別支給の老齢厚生年金」が支給されます。
| 区分 | 特別支給の老齢厚生年金 |
|---|---|
| 男性:1961年4月2日以降生まれ | ありません(65歳から) |
| 女性:1966年4月2日以降生まれ | ありません(65歳から) |
| それより前の生まれ | 生年月日に応じた年齢から支給される場合があります |
2026年時点で50代の方は、男女とも大半が65歳からの受給開始にあたります。60歳になっても年金請求書は届きません。「届かないから何か手続きを忘れたのでは」とご心配になる必要はありません。
📌 ご自身の受給開始年齢は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。50歳以上の方に届く定期便には、現在の加入状況が続いた場合の見込額が記載されています。受給開始年齢もあわせてご確認ください。
65歳より前に受け取りたい場合
繰り上げ受給を選べば60歳から受け取れますが、受け取り始めた年齢に応じて年金額が減り、その減額は生涯続きます。また一度請求すると取り消せません。障害年金が受けられなくなるなどの影響もありますので、慎重な検討が要ります。
提出先と、そろえる書類
提出先は加入していた制度によって異なります。厚生年金の期間がある方は年金事務所または街角の年金相談センター、国民年金のみの方はお住まいの市区町村の窓口です。
| 加入歴 | 提出先 |
|---|---|
| 厚生年金の期間がある | 年金事務所/街角の年金相談センター |
| 国民年金(第1号)のみ | お住まいの市区町村の国民年金担当窓口 |
| 共済組合の期間がある | 加入していた共済組合などにもご確認ください |
主な添付書類
- 受け取り口座がわかるもの(通帳やキャッシュカードの写し。金融機関の証明でも可)
- 戸籍謄本・住民票など(マイナンバーの記載により省略できる場合があります)
- 配偶者がいる場合:配偶者の年金手帳、所得を確認できる書類など
- 雇用保険被保険者証(お持ちの場合)
⚠️ 戸籍謄本などは、受給権が発生した日以降に取得したものが求められる場合があります。早く準備しようとして前もって取ると、取り直しになることがあります。取得の時期については、年金事務所にご確認ください。
予約相談が使えます
年金事務所は予約制の相談を受け付けています。書類の確認や記入方法について、窓口で相談しながら進められます。混み合う時期があるため、早めの予約をお勧めします。予約の方法は日本年金機構にご確認ください。
受け取り口座と、振込のタイミング
年金は偶数月の15日に、前の2か月分がまとめて振り込まれます。15日が土日祝にあたる場合は直前の平日です。口座はご本人名義のものを指定します。
| 振込日 | 対象の月 |
|---|---|
| 2月15日 | 12月分・1月分 |
| 4月15日 | 2月分・3月分 |
| 6月15日 | 4月分・5月分 |
| 8月15日 | 6月分・7月分 |
| 10月15日 | 8月分・9月分 |
| 12月15日 | 10月分・11月分 |
毎月の家計を組むときに、年金は2か月に1度入るという点が効いてきます。入った月に使ってしまうと、翌月の資金が足りなくなります。年金の入る口座と、毎月の生活費を出す口座を分けておく方法があります。
どの口座を指定するか
- ご本人名義の口座であることが要件です。配偶者名義の口座は指定できません
- 公共料金などの引き落とし口座と同じにすると、管理が簡単になります
- 一方で、将来ご自身で管理が難しくなったときのことを考えると、代理人届を出せる金融機関を選んでおくという考え方もあります
📌 Aさんの例
65歳で受給が始まったAさんは、年金を給与振込で使っていた口座に指定されました。偶数月にまとまって入るため、入った月は余裕があり、入らない月に足りなくなるという状態が半年ほど続きました。年金の入る口座を別に作り、そこから毎月一定額を生活費口座へ自動送金する形に変えてから、月ごとのばらつきがなくなっています。
扶養親族等申告書と、年金にかかる税金
年金は雑所得として課税の対象になります。一定額以上を受け取る方には扶養親族等申告書が送られ、提出の有無で源泉徴収される税額が変わります。
年金からは、所得税のほかに介護保険料、国民健康保険料または後期高齢者医療保険料、住民税が差し引かれる場合があります。振り込まれる金額は、年金額そのものではありません。
扶養親族等申告書
一定額以上の年金を受け取る方には、毎年秋ごろに「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」が送られてきます。これを提出すると、各種の控除が反映された税率で源泉徴収されます。
⚠️ 提出しないと、控除が反映されないまま源泉徴収される場合があります。その場合も確定申告をすれば精算されますが、手続きが一度増えることになります。届いたら期限内に返送してください。
確定申告が要るかどうか
公的年金等の収入が一定額以下で、ほかの所得も一定額以下であれば、確定申告が不要とされる制度があります。ただし医療費控除や生命保険料控除を受ける場合は、申告することで還付されることがあります。判断に迷う場合は、税務署または税理士にご確認・ご相談ください。
繰り下げを選ぶ場合にすること
繰り下げは請求せずに待つ形ですが、65歳の時点で届く書類への対応が必要です。老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることもできます。
繰り下げを選ぶと、1か月遅らせるごとに年金額が増え、その増額は生涯続きます。75歳まで遅らせることができます。
65歳時点ですること
65歳になる前に、日本年金機構からはがき形式の書類が届きます。繰り下げを希望される場合は、その旨を示したうえで請求しないで待ちます。何も返送しないのではなく、書類の指示に沿った対応が要ります。
片方だけ繰り下げることもできます
| 選び方 | 内容 |
|---|---|
| 両方とも65歳から受け取る | 通常の受給です |
| 両方とも繰り下げる | どちらも増額されます |
| 老齢基礎年金だけ繰り下げる | 厚生年金は65歳から受け取りつつ、基礎年金を増やします |
| 老齢厚生年金だけ繰り下げる | 基礎年金で生活費の一部をまかないながら待ちます |
⚠️ 繰り下げには注意点があります。加給年金は繰り下げ期間中に支給されず、増額の対象にもなりません。また年金額が増えると、税金や社会保険料の負担も増えます。さらに、待っている間の生活費をどこから出すかという問題が残ります。手取りと生活資金の両面で確認が要ります。
📌 35年の実務のなかで
繰り下げのご相談でいちばん多い行き違いは、「増えるかどうか」だけで判断してしまうことです。増えるのは確かですが、待っている間の生活費をどう作るか、増えた年金に対する税金と保険料がどうなるか。この3つを並べて初めて、ご自身にとっての答えが出てきます。
年金の請求手続きについてよくあるご質問
年金の受給開始を控えた方からいただくご質問をまとめました。請求の時期、提出先、振込のタイミング、繰り下げの扱いを扱っています。
請求しないと年金はもらえないのですか。
年金請求書はいつ届きますか。
誕生日の前日以降とは、どういう意味ですか。
最初の振込はいつになりますか。
年金は毎月振り込まれますか。
受け取り口座に指定できるのは本人名義だけですか。
50代ですが、60歳で年金請求書は届きますか。
繰り下げる場合は、何もしなければよいですか。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げられますか。
年金から税金は引かれますか。
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2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。
📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)
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FP事務所FPis(東京都渋谷区)/対面・オンライン・LINE・電話
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の投資判断・契約の勧誘・税務および法律に関する助言を目的とするものではありません。掲載している制度・税制・料率は執筆時点の情報にもとづいており、今後の制度改正により取り扱いが変わる場合があります。
実際の税額・年金額・社会保険料の計算や各種手続きについては、お住まいの自治体、年金事務所、税務署、または税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご確認・ご相談ください。金融商品にはそれぞれ価格変動リスク・為替リスク・信用リスク等があり、運用の成果によっては元本を下回る可能性があります。
FP事務所FPis/代表 石田健雄(CFP・1級FP技能士)。所属先を通じて生命保険・損害保険・金融商品仲介の募集人として登録しています。

