税務署から、見慣れない書類が届いたら|準確定申告の4か月
ご葬儀が終わって少し経ったころ、亡くなった方のお名前で、税務署から封書やはがきが届くことがあります。中を開いても、何を求められているのかがすぐには分かりません。「何か手続きを忘れていたのだろうか」と、不安になられる方が多いところです。この記事では、その書類が何なのか、そして準確定申告という手続きの期限を、順番に整理します。
📌 この記事の要点
- まず差出人と表題を読んでください。それだけで、何の書類かはたいてい分かります
- 国税庁は、確定申告書用紙の送付に代えて「確定申告のお知らせ」はがき等を送っています。これは生前の申告記録にもとづくものです
- 準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月です
- 必要な方と、不要な方がいます。書類が届いたことと、申告が必要かどうかは、別の話です
- 申告書をつくるのは税理士の仕事です。私がやるのは、順番を整えて、誰にいつ頼むかを決めるところまでです
まず、差出人と表題を読んでください
税務署から届く書類にはいくつか種類があり、表題を見れば何の書類かが分かります。封を切る前に、差出人がどこの税務署か、表題に何と書かれているかを確認してください。分からないときは、書類に記載された税務署に問い合わせれば、何の書類かを教えてもらえます。
不安になるのは、中身が分からないからです。順番として、まず表面を読みます。
- 差出人:どこの税務署か。亡くなった方の住所地を管轄する税務署であることが多くあります
- 表題:「確定申告のお知らせ」なのか、別の名称なのか
- あて名:亡くなった方あてか、ご家族あてか
この3つを控えておいてください。問い合わせるときにも、そのまま使えます。
💡 分からなければ、聞いていいのです。書類に記載された税務署に電話をすれば、何の書類で、何を求めているのかを教えてもらえます。税務署は、そのための窓口も持っています。名前を名乗るのが不安であれば、「亡くなった父あてに届いた書類について」と切り出せば足ります。
「確定申告のお知らせ」というはがきがあります
国税庁は、確定申告書用紙の送付に代えて「確定申告のお知らせ」はがき又は封書を送っています。送付されるのは翌年も申告が必要と見込まれる方で、公的年金等の所得がある方などが対象に含まれます。生前の申告記録にもとづいて送られるものです。
国税庁は、送付する書類について次のように説明しています。
「国税庁では、資源保護及び行政コスト削減の観点から、確定申告書用紙の送付に代えて、「確定申告に必要な情報」(予定納税額など)、「e-Tax等のご案内」などを記載した「確定申告のお知らせ」はがき又は封書をお送りしております。」
(国税庁「確定申告書用紙に代えて「確定申告のお知らせ」はがき等をお送りしています」より)
誰に送られるのか
同じ資料に、送付の対象が書かれています。
「「確定申告のお知らせ」はがき等が送付される方は、翌年も申告が必要と見込まれる方で、以下の1から3までのいずれかに該当する方です」とされ、「翌年も申告が必要と見込まれる方」については「事業・農業・不動産所得のいずれかがあり、青色申告決算書・収支内訳書の作成が必要な方、予定納税や公的年金等所得のある方のほか、消費税の課税事業者の方などをいいます」と説明されています。
ここで大切なのは、これが生前の申告記録にもとづいて送られるものだという点です。年金を受け取っていた方、確定申告をしていた方には、亡くなったあとでも届くことがあります。
💡 つまり、この書類は「あなたに何かを求めている」ものではありません。毎年の確定申告の時期に向けて、これまで申告してきた方に送られる案内です。あて名が亡くなった方になっているのは、税務署がその時点で把握している情報にもとづいているためです。
準確定申告の期限は、4か月です
年の中途で亡くなった方について、相続人等が1月1日から死亡した日までの所得を計算して申告と納税をする手続きを準確定申告といいます。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。提出先は、亡くなった方の死亡当時の納税地を所轄する税務署長です。
国税庁のタックスアンサーには、こう書かれています。
「年の中途で死亡した人の場合は、相続人(包括受遺者を含みます。以下「相続人等」といいます。)が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。」
(国税庁 タックスアンサー No.2022 より)
期限の数え方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起算日 | 相続の開始があったことを知った日の翌日 |
| 期限 | そこから4か月以内 |
| 対象の期間 | その年の1月1日から死亡した日まで |
| 提出先 | 亡くなった方の死亡当時の納税地を所轄する税務署長 |
相続人が複数いる場合
タックスアンサーには「各相続人等が連署により準確定申告書を提出することになります。ただし、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます」とあります。別々に出す場合は、申告した内容を他の相続人に通知することとされています。
提出する書類として、「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を添付することが示されています。還付金の受け取りを代表者に委任する場合は、これとは別に「委任状(準確定申告書用)」が必要です。
必要な方と、不要な方がいます
準確定申告が必要になるのは、亡くなった方が生前に確定申告をする必要があった場合です。公的年金等の収入が一定額以下で、他の所得も少ない方については、確定申告の必要がないとされる制度があります。書類が届いたことと、申告が必要かどうかは別の話です。
ここがいちばん誤解されやすいところです。書類が届いた=申告が必要、とは限りません。
公的年金等に係る確定申告不要制度
国税庁のタックスアンサーには、次のように書かれています。
「その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。」
(国税庁 タックスアンサー No.1600 より)
年金を主な収入としていた方の多くが、この範囲に入ります。生前に確定申告をする必要がなかった方は、準確定申告も必要にならないことがあります。
出すと戻ることもあります
同じタックスアンサーには、こうも書かれています。「この場合であっても、例えば、医療費控除や社会保険料控除など各種の所得控除の適用による所得税の還付を受けるための確定申告をすることができます」。
亡くなる前に医療費が多くかかった場合など、申告する義務はなくても、申告すれば還付を受けられることがあります。義務と、権利は別です。
💡 分かれ目は「生前、確定申告をしていたかどうか」です。毎年2月から3月に申告書を書いていた方であれば、準確定申告が必要になる可能性があります。年金と、勤務先の年末調整だけで終わっていた方は、必要にならないことがあります。これは、通帳や過去の書類を見れば、ご自分でも確認できます。
届かなくても、必要なことがあります
準確定申告が必要かどうかは、税務署からの書類の有無では決まりません。書類が届かなくても申告が必要な方はいますし、届いても不要な場合があります。判断の材料になるのは、亡くなった方の生前の所得の状況です。
逆の場合もあります。何も届かないから大丈夫、とは言えません。
先に引用した国税庁の資料には、送付されない方についての注記があります。「所得税若しくは消費税についてマイナンバーカード方式を利用してe-Tax送信により申告された方、税理士に作成・提出を依頼して申告された方又は予定納税額などの情報がない方には「確定申告のお知らせ」はがき等が送付されません」。
つまり、毎年きちんと申告していた方でも、届かないことがあります。
確認する材料
- 過去の確定申告書の控え:ご自宅に残っていることが多くあります
- 源泉徴収票:年金の源泉徴収票、給与の源泉徴収票
- 通帳:家賃収入や事業の入金があったかどうか
- 顧問の税理士がいたかどうか:いた場合は、その方に聞くのがいちばん早い道です
⚠️ 4か月は、思うより早く過ぎます。ご葬儀、金融機関の手続き、役所の届出。それらを進めているうちに、2か月ほどはすぐに経ちます。判断だけでも早めにつけておくと、慌てずに済みます。
申告書をつくるのは、税理士の仕事です
準確定申告の申告書を作成し提出するのは税理士の業務です。私がするのは、いま何が残っているかを一覧にして、順番を決め、誰にいつ頼むかを整理するところまでです。ご本人に代わっての申請や届出は行いません。
線を、はっきりさせておきます。
| やること | 担うのは |
|---|---|
| 準確定申告書の作成・提出 | 税理士 |
| 相続税の申告書の作成 | 税理士 |
| 不動産の名義変更(相続登記) | 司法書士 |
| 遺産分割でもめたときの交渉・代理 | 弁護士 |
| 残っている手続きの洗い出しと、順番の決定 | 私 |
私がするのは、順番を整えて、誰にいつ頼むかを決めるところまでです。相続登記の申請も、相続税や準確定申告の申告書の作成も、私の仕事ではありません。ご本人に代わっての申請・届出も行いません。
ご自分でできる場合は、その方法をお伝えします。税理士や司法書士をご紹介した場合も、紹介料は受け取っていません。
💡 準確定申告が必要かどうかの見当をつけるところまでは、ご自分でもできます。過去の申告書の控えと、源泉徴収票を探すところからです。必要だと分かったときに、税理士にお願いすればよいのです。先に全部を頼む必要はありません。
いま、できること
届いた書類の差出人と表題を控え、亡くなった方の過去の申告書の控えと源泉徴収票を探します。この2つがそろえば、準確定申告が必要かどうかの見当がつきます。分からなければ、順番を整理するところからご一緒します。
今日できることは、多くありません。2つだけです。
- 届いた書類の、差出人と表題を控える。捨てずに取っておいてください
- 過去の確定申告書の控えと、源泉徴収票を探す。見つからなければ、それも情報です
この2つで、準確定申告が必要かどうかの見当はつきます。そこから先は、必要な方だけが税理士に相談すれば足ります。
順番を、一緒に決めます
「何から手をつければいいか分からない」という状態のままで構いません。90分のご相談に料金はいただきません。手続きのあいだ、保険や投資の話をこちらから持ち出すこともありません。
亡くなった日を入れるだけで、残っている期限が分かります(登録は不要です)。
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よくある質問
税務署から届いた書類と準確定申告について、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。期限と、必要かどうかの分かれ目に関するものが中心です。
税務署から届いた書類は、何ですか?
届いたということは、申告が必要なのですか?
準確定申告の期限はいつまでですか?
年金だけで暮らしていた父でも、申告は必要ですか?
何も届いていません。それなら不要ということですか?
相続人が複数います。どうすればよいですか?
提出するのは申告書だけですか?
医療費が多くかかりました。何かできますか?
申告書を作ってもらえますか?
相談には費用がかかりますか?
本記事は情報提供を目的としたものです。記載は執筆時点(2026年9月)に公表されている国税庁および法令の情報にもとづいています。制度の内容や取り扱いは改正されることがありますので、実際のお手続きにあたっては国税庁ホームページおよび所轄の税務署の最新の案内をご確認ください。
個別の税務の判断および申告書の作成については税理士に、登記については司法書士に、法律上の争いについては弁護士にご相談ください。本記事の内容は、税務相談に代わるものではありません。
相続案内人 石田 健雄(CFP・1級ファイナンシャル・プランニング技能士)/FP事務所FPis 東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階

