60歳以降も働くと年金は増えるか|厚生年金を続ける効果
「もう年金の額は決まっているから、これ以上働いても増えませんよね」——そうお考えの方は少なくありません。実際には、厚生年金は70歳まで加入でき、加入した分だけ年金は増えます。ただし増え方には決まりがあり、増える部分と増えない部分があります。この記事では、60歳以降に働くと年金がどう増えるのかを、しくみから順に整理します。
📌 この記事の要点
- 厚生年金は70歳まで加入でき、加入した期間に応じて年金は増える
- 増えるのは報酬比例部分。老齢基礎年金は原則20歳から60歳までの加入で決まる
- 65歳以降は在職定時改定により、毎年10月分から増えた分が反映される
- 60歳から65歳の加入は経過的加算という形でも年金額に効いてくる
- 働きながら受け取る場合は在職老齢年金で一部が止まることがある(令和8年度は65万円が基準)
厚生年金は70歳まで加入できる
厚生年金の加入は原則70歳までです。60歳で定年を迎えても、再雇用などで働き続け加入要件を満たしていれば保険料を納め続け、その分だけ将来の年金が増えます。加入をやめた時点で積み上がりも止まります。
まず前提を整理します。公的年金は2階建てです。
| 部分 | 加入できる期間 | 60歳以降に増えるか |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金(1階) | 原則20歳から60歳まで(480月が上限) | 原則として増えない |
| 老齢厚生年金・報酬比例部分(2階) | 原則70歳まで | 増える |
つまり、60歳以降に働いて増えるのは2階部分です。「もう決まっている」と思われがちなのは1階部分のほうで、こちらは60歳までの加入月数で決まります。
💡 Hさん(61歳・女性)は、定年後に週4日の勤務で再雇用されていました。「どうせ増えないから」と加入を外れる働き方も検討されていましたが、試算してみると、65歳まで加入を続けた場合と外れた場合とで、生涯で受け取る額に差が出ることが分かりました。
増えるのは「報酬比例部分」
老齢厚生年金の報酬比例部分は、加入期間中の給与と加入月数によって決まります。60歳以降も加入を続ければ、その期間の給与に応じた分が上乗せされます。給与が下がっていても、加入していれば積み上がります。
報酬比例部分のおおまかな考え方
報酬比例部分は、加入期間中の平均的な給与 × 一定の率 × 加入月数という形で計算されます。細かくは2003年3月以前と4月以降で率が分かれますが、感覚としては「いくらの給与で、何か月加入したか」で決まると考えていただければ十分です。
💡 再雇用で給与が下がると「下がった給与で計算し直されるのでは」と心配される方がいらっしゃいますが、そうではありません。これまでの加入分はそのまま残り、そこに下がった給与に応じた分が積み上がる形です。増え方はゆるやかになりますが、減ることはありません。
目安の感覚
厚生年金の報酬比例部分は、ごくおおまかには月収20万円で1年間加入すると、年額でおよそ1万3千円前後増えるといった水準感です。生年月日や加入時期によって計算が変わりますので、正確な額はねんきんネットの試算機能、または年金事務所でご確認ください。
1年でこの水準ということは、5年続ければその5倍が、受け取り始めてから生涯にわたって上乗せされるということになります。
65歳以降は毎年反映される|在職定時改定
65歳以上70歳未満で働き続ける方は、毎年9月1日時点の加入状況をもとに年金額が再計算され、10月分から反映されます。これを在職定時改定といい、2022年4月から始まりました。退職を待たずに増えた分を受け取れます。
2022年3月以前は、退職するか70歳になるまで年金額は改定されませんでした。働き続けている間は、保険料を納めているのに年金額は据え置きだったのです。
いまのしくみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 65歳以上70歳未満で、9月1日に厚生年金の被保険者である方 |
| 反映される期間 | 前年9月から当年8月までの加入期間 |
| 反映される時期 | 10月分の年金から(実際の振込は12月) |
(出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」)
💡 毎年少しずつ年金が増えていくことになります。増え方は大きくありませんが、受け取り始めてからの年数を考えると、積み重なる効果は小さくありません。12月の振込額が前年と違っていたら、この改定によることが多くあります。
65歳より前はどうか
60歳から65歳までの加入分は、その都度の改定はありません。65歳になったとき、または退職して1か月を経過したときにまとめて反映されます。
もうひとつの増え方|経過的加算
経過的加算は、老齢厚生年金の定額部分にあたる計算と老齢基礎年金の差額を埋める仕組みです。60歳以降に厚生年金へ加入した期間は老齢基礎年金には反映されませんが、経過的加算という形で一部が年金額に加わります。
ここは分かりにくいところですが、60歳以降に働く意味を考えるうえでは知っておく価値があります。
なぜ生まれるのか
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの加入で計算されます。60歳以降に厚生年金へ加入しても、老齢基礎年金は増えません。一方、老齢厚生年金にはかつての「定額部分」にあたる計算が残っており、こちらは60歳以降の加入も含めて計算されます。
この差額を埋めるのが経過的加算です。結果として、60歳以降の厚生年金加入が年金額に反映されます。
⚠️ 経過的加算にも上限があり、対象となる月数には限りがあります。とくに、学生時代に国民年金の未納や猶予の期間がある方は、60歳以降の厚生年金加入によってその穴が埋まる形になり、効果が大きく出ることがあります。ご自身の記録は、ねんきん定期便または年金事務所でご確認ください。
国民年金の任意加入との違い
| 厚生年金に加入して働く | 国民年金に任意加入する | |
|---|---|---|
| 対象 | 60歳以降も勤務先で加入要件を満たす方 | 60歳以上65歳未満で、480月に満たない方 |
| 増える部分 | 報酬比例部分+経過的加算 | 老齢基礎年金 |
| 保険料 | 労使折半 | 全額自己負担 |
厚生年金に加入して働ける状況であれば、保険料を会社と折半できる点は大きな違いです。任意加入については 国民年金の任意加入 で扱っています。
増える一方で、止まることもある
老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、年金の月額と給与の合計が支給停止調整額を超えると、超えた分の2分の1が支給停止になります。令和8年度の基準は65万円です。止まるのは厚生年金部分だけです。
計算のしかた
基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額)と、総報酬月額相当額(標準報酬月額+直近1年の賞与の12分の1)を足します。その合計が65万円(令和8年度)を超えると、超えた分の2分の1にあたる年金が止まります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 止まる額 | (基本月額+総報酬月額相当額 − 65万円)÷ 2 |
| 止まらないもの | 老齢基礎年金、および経過的加算 |
| 基準額 | 毎年度、賃金の変動に応じて改定 |
💡 2025年の制度改正で基準額を62万円へ引き上げることが決まり、令和8年度の改定を経た金額が65万円です。基準は上がる方向で動いてきました。数年前の「28万円」「47万円」といった数字を覚えている方は、あらためて現在の額をご確認ください。
止まった分はどうなるか
支給停止になった分は、あとから受け取れるわけではありません。ただし、その期間に納めた保険料は将来の年金額に反映されます。納め損になるわけではない、という点は押さえておいてください。
繰り下げと組み合わせるとどうなるか
働きながら年金を繰り下げると、繰り下げによる増額と加入による増額の両方が期待できます。ただし在職老齢年金で支給停止となっている部分は繰り下げによる増額の対象になりません。事情によって結論が変わります。
組み合わせの考え方
- 繰り下げによる増額:1か月あたり0.7%、最大75歳まで(84%増)
- 加入による増額:働いた期間の報酬比例部分と経過的加算
- 注意点:在職老齢年金で支給停止となっている部分は、繰り下げの増額の対象になりません
⚠️ 給与が高く、在職老齢年金で大きく停止されている方が繰り下げを選ぶと、思ったほど増額されない場合があります。繰り下げの効果は、停止されていない部分に対して働きます。ご自身の基本月額と給与を当てはめて確認してください。
繰り下げそのものの損益の考え方は 年金繰り下げ受給は得か損か、夫婦での受け取り順は 夫婦の年金はどちらを繰り下げる で扱っています。
自分の場合はどうなるか、確かめる方法
ねんきんネットの試算機能を使うと、何歳まで働き、いくらの給与で加入を続けた場合に年金がどうなるかを確認できます。年金事務所の窓口でも試算を依頼できます。実際の数字で見ることが判断の出発点になります。
確かめる場所
- ねんきんネット:働き方を変えた場合の年金見込額を試算できます
- 年金事務所:予約のうえ相談すると、記録を確認しながら試算してもらえます
- ねんきん定期便:これまでの加入記録と、未納・猶予の期間を確認できます
試算するときに決めておく前提
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 何歳まで働くか | 65歳まで/68歳まで/70歳まで |
| 月額いくらで働くか | 再雇用後の見込み額 |
| いつから受け取り始めるか | 65歳から/繰り下げる |
この3つを変えて何通りか出すと、働く期間を1年延ばすことの効果が金額で見えます。「なんとなく働き続ける」より、判断がしやすくなります。
働き続けるかどうかは、金額だけでは決まらない
年金が増えることは働き続ける理由のひとつですが、それだけで決めるものではありません。体力、家族の状況、やりたいことを含めて考えます。金額は判断材料のひとつとして、正確に把握しておく意味があります。
ご相談のなかでよく申し上げるのは、「増えるかどうか」と「働き続けるかどうか」は別の問いだということです。
💡 Iさん(63歳・女性)は、親御さんの介護が始まったことで勤務日数を減らす判断をされました。年金の増え方はゆるやかになりますが、「いま必要なのはお金より時間でした」とおっしゃっていました。試算をしたうえで、納得して選ばれたことが大切だったと思います。
数字を知っておく意味
- 働き続ける場合にどれだけ増えるかが分かる
- 働く時間を減らす場合に何を手放すかが分かる
- いずれの場合も、資産の取り崩しがいくら必要かが計算できる
決めるのはご本人です。判断のもとになる数字を、思い込みではなく実際の記録から出しておくことをおすすめします。
よくある質問
60歳以降の厚生年金加入について、ご相談の場でよくいただく質問をまとめました。増え方のしくみと、働きながら受け取る場合に関するものが中心です。
厚生年金は何歳まで加入できますか?
60歳以降に働くと老齢基礎年金も増えますか?
在職定時改定とは何ですか?
60歳から65歳の加入分はいつ反映されますか?
再雇用で給与が下がると年金は減りますか?
働くと年金が止まると聞きましたが本当ですか?
止まった年金はあとで受け取れますか?
繰り下げと働き続けることは両立しますか?
学生時代に未納期間があります。60歳以降の加入で埋まりますか?
どこで試算できますか?
東京・渋谷のFP事務所FPisが選ばれる理由
FP事務所FPis(エフピス)は、東京都渋谷区に拠点を置く独立系のFP事務所です。代表の石田健雄は第一生命に35年勤務したのち、2025年4月に独立しました。ご相談は、お手元の数字を一枚に並べて全体を見えるようにするところから始めています。
石田 健雄(いしだ たけお)|FP事務所FPis代表
CFP・1級FP技能士。第一生命に35年間勤務後、2025年4月に独立開業。ライフプラン・保険・資産運用・相続のご相談に対応しています。渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階。対面・オンライン・LINE・電話で対応。
対応エリア:東京都渋谷区周辺・首都圏全域(オンライン可)
「70歳まで働き続けたい。
だからこそ、今このタイミングで独立するべきだ」
石田は第一生命に35年間勤め、本社所属のFPとして多くのお客様に向き合ってきました。40代で個人向け営業の最前線に立った4年間は「会社人生で最も充実していた」と振り返るほど手応えのある日々でした。
とりわけ印象に残っているのが、ご家族への寄り添いサポートです。複雑な手続きを一緒に進めてさしあげると「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただきました。「お客様の役に立てる喜び」——その体験が石田の原点です。
2025年3月末に第一生命を退社し、翌4月1日にFPis(エフピス)の看板を掲げました。
📰 出典:「第一生命『黒字リストラ』1000人募集に約2倍応募」(日経BP / Human Capital Online)
FPisが提供できる5つの強み
- 独立系のFP事務所:特定の金融機関に雇用されていないため、転勤で担当が変わることがありません
- 報酬の出どころを開示:いただく報酬がどこから来ているかを「なぜ無料なのか」にすべて書いています
- ワンストップ対応:FP相談を軸に、商品の取り扱いが必要な場合は石田が所属先の登録を用いて対応します
- 伴走型の継続サポート:年1回以上のフォローアップで継続的に見直し
- 専門家ネットワーク:税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルタントとの連携体制
📍 FP事務所FPis(エフピス)
東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階(渋谷駅・宮益坂口から徒歩約5分)
対面・オンライン・LINE・電話・メール、すべてに対応。首都圏以外からもオンラインでご相談いただけます。
あと何年働くかは、金額にしてから考えられます
FP事務所FPisは、初回90分のご相談を無料でお受けしています。ねんきん定期便をお持ちいただければ、働く期間を変えた場合の年金の見込みを一緒に並べて確認します。
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の勧誘や投資判断の推奨を目的とするものではありません。制度の内容や税の取り扱いは改正されることがあります。記載は執筆時点の公表情報にもとづいており、実際のお手続きにあたっては公的機関の最新の案内をご確認ください。
個別の税務の判断については税理士に、法律の判断については弁護士・司法書士にご相談ください。社会保険・雇用保険の個別の取り扱いについては、年金事務所・ハローワークにご確認ください。運用による成果を保証するものではなく、金融商品には元本割れの可能性があります。
FP事務所FPis(東京都渋谷区渋谷2-19-19 ワコー宮益坂ビル5階)/代表 石田健雄(CFP・1級FP技能士)

